第1回 僕は空手、私はダンス
学校のアクティビティとして行われるネットボール。ニュージーランドの女子のスポーツの代表だ

日本の小学校で、放課後にクラブ活動が行われているのと同じように、「クラブ」という名は付かないものの、ニュージーランドの学校でもアクティビティが用意されている。今はどうなっているかわからないが、私が日本で学校に通っていた時とは違い、当地ではバラエティーが今ひとつ。うまく自分の興味と合わないケースも多々見受けられる。

ダントツの人気は水泳

ニュージーランドの多くの小学校で行われているアクティビティのほとんどはスポーツだ。サッカー、タッチラグビー(タックルの代わりにタッチするラグビー)、ネットボール(バスケットボールと似ており、女性選手のみ)とチームスポーツで、たいてい週に一回練習をし、週末に他校との試合に臨む。文化系のものはチェスがあるぐらい。こちらも校内で予行演習を定期的に行い、年に一度ある全国大会を目指す。

シングルで行うスポーツや、チェス以外の文化系アクティビティに挑戦したかったら、どうするのか。校外で行われている習いごとに通うことになる。

空手を習う子どもたち。小さな国ながら、各流派の道場がそこここにある© PKA Karate (CC BY-ND 2.0)

講座・レッスンの予約サイト、『ケイコとマナブ.net』によると、日本の子どもたちが通う習いごとのトップ3は、水泳、英語・英会話、ピアノだそうだ(2017年)。これに見合うニュージーランドの統計は見つからなかったのだが、暮らしている中で感じるのは、圧倒的な水泳レッスンの人気。習うのは、幼稚園から小学校の低学年の子どもが中心だ。マーシャルアーツもポピュラー。マーシャルアーツとは、空手などの武道やテコンドーなどの格闘技のことだ。音楽も、ピアノやバイオリンといったよく聞く楽器はもちろん、フルートやドラムなどを習う子も比較的よく見る。

どの習いごとにしても、あまり性別に偏りはないようだが、ダンスだけは教室を覗くと、ほぼ全員が女の子。私の周囲の小さい女の子たちに将来の夢のことを聞くと、「バレリーナ」という答えが返ってくることが多く、また親も、チュチュなどのコスチュームを着、美しく踊る娘の姿を見てみたいと、バレエを習わせたがる傾向があるように思う。

レッスン代は1学期100NZドル以上

小学校でのアクティビティの場合、費用は支払わなくてはならないものの、ユニフォームは貸してもらえるし、コーチは親がボランティアで務めるので、高額にはならない。しかし、校外での習いごとには結構お金がかかる。

教える側の資格や、レッスン時間と回数にもよるので、一概にはいえないが、例えば1学期(10週間)で、水泳なら100NZドル(約7,800円)、空手なら150NZドル(約1万2,000円)、ピアノなら250NZドル(約2万円)、バレエなら200NZドル(約1万6,000円)といったところだろうか。4学期制なので、年間費用はこの4倍となる。習いごとはレッスン代だけでは済まず、たいてい専用の衣類や用具代もかかってくる。私のお母さん友達の中には、自分のパート代はすべて子どもの習いごと代に消えるという人もいる。

習いごとの費用というのはおかしなもので、払うのは大変だが、反対に払わなくていいとなると、通わなくなってしまうケースがあるらしい。ある音楽スクールで無料レッスンをしてみたところ、無料レッスンを受ける子どもは、費用を払う子どもに比べて、熱心さに欠け、すぐにやめてしまったという話を聞いたことがある。

好きなことをやるのだから、責任を持って

多くの家庭で経済的負担になりながらも、親が子どもの習いごとを支援するのはどうしてだろうか。理由のひとつに、習う内容自体だけでなく、習いごとを組み込むことで、子どもが効率よく、リズムのある生活習慣を身に付けられることが挙げられる。

ニュージーランドではたいていの場合、子どもが習いたいというものを習わせる。自分でやりたいと始めたものなのだから、自分で準備や練習をし、レッスンにきちんとまじめに通うよう、親は促す。宿題があっても、子どもたちは自分で時間をやりくりして、宿題も習いごともこなす。つまり、自分の言動に責任を持ちなさいということを教える、いい機会でもあるのだ。

各々の習いごとならではの「副産物」に着目する親もいる。例えば、マーシャルアーツを習う際には、必ず礼儀を学ぶことになる。先生を敬い、しっかりあいさつやお礼を言う。そんな姿勢を子どもが身につけられることは、技術を身につけるのと同様、大切と考えているのだ。また音楽であれば、音楽を習うことが子どもの算数の能力に結び付くという説がある。楽譜を読み、楽器を演奏するということは、分数や比などを理解せずにはできないためで、2つの関連性を評価する親がいる。

こんな風に、習いごとが子どもにとってプラスになると理論的に考える一方で、親にとって純粋にうれしいのは、学校とは違った場でも子どもがキラリと光るものを見せてくれることだ。そして何より、習いごとに勤しむいきいきとした姿が、親を、多少大変でも子どもの習いごとを応援しようという気にさせるに違いない。

クローディアー真理/プロフィール
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。ウェブサイトを中心に、環境、ビジネス、子育て・教育といった分野で執筆活動を行う。子ども時代、親の薦めで習っていたピアノを中学受験にかこつけてやめた苦い経験あり。娘には自分のやりたい習い事を選ばせた。