239号/椰子ノ木やほい

今月は銃犯罪が身近で起こるというびっくりな幕開けだった。ハラハラドキドキの1日を終え、日が変わったところで容疑者が捕まったのは良かったが、だからといって、パッと気が晴れるわけではない。……が、今回はちょうど良いタイミングで、事件の翌日には春休み休暇でお気に入りのカリビアンリゾートに向かう計画をたてていたため救われた。

子どもたちがそれぞれ巣立ってからというもの、やっと自分の、そして夫婦のセルフケアのための時間を持てている。大家族の母として暮らしていたころの毎日は、家族のために起きて、食べて、作って、洗って、走って、走りながら、日々起こる問題、課題にブルブル振り回され、「今日が自分のためにある」なんて考えたことも、感じるゆとりもなかった。それを思うとなんともありがたいことである。「ビンボーヒマなし」が染み付いた身にとって、初めて夫婦水入らずの旅を実行したときには、その瞬間も頑張っている人たちに悪い気がして、罪悪感すら感じたことを思いだす。

そんなわたしも今では、ゆったりのんびり、至れり尽くせりの時を持つことは、心身の管理と、夫婦が仲良くするためのエッセンスとして、とても効果がありたいせつだと感じるようになった。

今回の休暇ではもうひとつうれしい再会があった。カンクン在のMさんとは地球丸が生まれたころからの付かず離れずのお付き合いだ。かれこれ十数年前、わたし自身もライター活動を始めたばかりのころ、子育てにまつわるエッセイを某媒体に寄稿していたが、彼女もまたメキシコ発で記事を書かれていた。当時は、サモアの大家族の暮らしと重ねては、彼女の描くメキシコ発子育てを楽しく拝読したものだ。

3年3ヶ月ぶりの再会をメキシカンビールで乾杯。タコスを食べながら近況を報告しあっていると、わたしの子育てが終わったのと同様、彼女のママ業も最終章に入りつつあることが伝わってくる。何より、ついこの前までは3人のお母ちゃん! というエネルギッシュなママぶりを漂わせていたのに、今回は雰囲気がちがった。黒髪のロングヘアをなびかせ、高いヒールの靴を履きドキッとするほど「セクシーなオトナの女性」に見えたのだ。

それもそのはず、いちばん上の息子さんは職を得て自立、二番め、三番目のお子さんたちも海外で修行中とのこと。夜にはヨガのクラスで体も鍛えているそうだ。物理的に家庭内でママをしなくていいライフステージを迎えていた。なるほど~!

「子どもがいないとさびしいけど楽~~!」ってことで大きくうなづきあうわたしたちであった。

(米国・ミシガン州在住 椰子ノ木やほい)