第8回 スカラーシップ

アメリカでは優秀でやる気のある生徒が、経済的な理由で進学できない場合、救いの手を差し伸べる制度がある。スカラーシップ(scholarship、奨学金)だ。もちろん生徒自身が応募するのだが。成績優秀な生徒、何かに超秀でている人、才能のある人だけがもらえると思っていた。私には全く縁がないだろう、と。実は敷居が低い奨学金プログラムもあるらしい、と耳にしたのでワークショップに行ってみた。

思ったより人が集まっており、部屋には熱気がこもっていた。お金となると人は動く。説明をしてくれる講師の女性が切り出した。

「奨学金の種類はたくさんあります。実はありすぎて、自分に合ったものを見つけるのに時間がかかりますね」

講師によると、アフリカ系女子、アジア系生徒といった人種や性別に基づいて奨学金がもらえるだけではない。なんと左利きの人への奨学金もあるという。

私が関心したのは、「大学へ進学する1世(first generation college student、またはfirst in family)」という奨学金だ。大卒の人がいない家庭の子どもが大学に入学するとき、経済的援助をするというのだ。するとアメリカ出身でないと思われるアジア系の女性が、アクセントのある英語ですぐに質問した。

「私の父は大卒です。ただし、私は移民なので米国での大学生1号となります。こういった奨学金に応募することはできますか?」

講師は、残念ながら彼女は該当しないと答えた。

もらえる金額はプログラムによってかなりの差がある。私は考えた。もし私に合った奨学金があり、応募して通ったら就職の際、履歴書に加えることができる。コネやツテが何もない私は、少しでも自分をアピールしなくてはならない。私は身を乗り出して、講師の話を聞き続けた。

応募書類の記入に時間がかかり、推薦書を頼んで書いてもらうのは面倒らしい、と講師が言う。エッセイを提出する場合もあるそうだ。こういった労力と、奨学金の額を比較した結果、応募する気を失う人は多いらしい。講師は付け加えた。

「スポンサーはお金をあげたくて待っているのに、応募者がいないという奨学金プログラムも結構あるんですよ」

そうか、金額はともかく何か見つかったらやってみようじゃない。それに少しでもお金が入ったら助かる、と思った。

 結果から言うと、私は自分に合った奨学金プログラムを見つけることができた。先生が授業中に「誰か応募してみたら」と教えてくれたのだ。2人の教授から推薦状をもらい、無事応募できた。頂いた$500は、教科書代にした。何より履歴書に1つ書けることが増えたのがうれしかった。やってみてよかったと思う。

 

伊藤葉子(いとうようこ)/プロフィール
ロサンゼルス在住ライター兼翻訳者。米国登録脳神経外科術中モニタリング技師、米国登録臨床検査技師(脳波と誘発電位)。訳書に『免疫バイブル』(WAVE出版)がある。