240号/プラド夏樹

フランスに暮らして30年近くなるが、最近、日本人の長期滞在者の中で帰国する人が多くなったような気がする。フランスの失業率が高いのに比べて日本の景気が良いこと、子どもが大きくなったから、両親の介護、離婚、理由は様々だ。

『アラフィフライター、日本に出戻る ~在仏22年、発達障害の息子と日本に帰国』を書かれている江草さんは、フランスで『Bisou』という子育てやBIOに関するフリーペーパーを99年に創刊し、現在日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポン』www.bisoujapon.comにまで育てた方だ。

私は、日本ではまったく文章を書いたことがなかったが、10年ほど前、パリで江草さんが編集長を勤める『Bisou』の校正会議に参加させてもらってから、ボチボチと書き始めた。その後はメディア広場に紹介してもらい、地球丸でも編集部の仲間に入れてもらった。いわば、校正することから書き始めたと言っても良いだろう。

『Bisou』とはフランス人が友人や子ども、パートナーなどの頬っぺたに親愛の情を込めてチュッとするキスのことだ。とてもフランスらしいタイトルで、多くの在仏ママたちに読まれた。その彼女が帰国してしまうことは、私にとってはとても寂しいことだが、彼女なりの理由があることが、現在連載中の原稿に本音で書かれている。『Bisou』は日本とフランスをキーワードに多くの人間関係を創った。今後も、日本とフランスの架け橋になってくれると嬉しい。

(フランス・パリ在住 プラド夏樹)