248号/プラド夏樹

いつもならクリスマスプレゼントを買ったり、年賀状を書いたりといった心温まる時期だが、今年、私が暮らすフランスは物騒なことになっている。

地球温暖化に対応するための政策として、政府が燃料税を引き上げると発表した。ところが、これが中産階級の怒りを買い、デモというよりは民衆蜂起となって国中が荒れているからだ。あちらこちらで車が燃やされ、店が壊され、デモ隊が大けがをし、警官が袋叩きにあい、機動隊もヘトヘト……

「地球に優しく」というのは簡単だが、国全体が実際の生活の中でこれまでの習慣を一変するのは至難の技だ。多くのフランス人はこれまでポンコツ車を直し、なだめながら乗って暮らしてきたわけだが、来年の車検時から排気ガスの規制が厳しくなる。しかし、電気自動車に買い換えるとなると、そんな金はない。公共交通手段のない、一人一台の車を必要とする地域の人々はどうする? おまけにガソリン代も上がるの? 彼らは「エコロジーなんて金持ちのたわごと!俺たちは食わせてくれって言ってるだけなんだ!」と言う。確かにねえ……

環境問題と格差問題の二つを切り離して考えることはできないという良い例ではないだろうか? 日本は、もともと自然の存在感が大きい国だが、特に、今年は自然災害が多かった。来年はもう少し心穏やかに暮らせる年であることを心から祈ると同時に、今後、日本で、環境問題と格差問題の両方に焦点を当てた議論がどのように進展するのか注目していきたい。

(フランス・パリ在住 プラド夏樹)