第1回  村おこしのチャンスに使う? 各自治体が誘致に躍起な事前合宿とは何か?

「五輪旗」は今、日本各地の自治体を巡回している 「五輪旗」は今、日本各地の自治体を巡回している

“TOKYO 2020”東京五輪の開催まであと1年半余りとなった。2013年の秋、華々しく開催国に選ばれたあの瞬間こそ歓喜に沸いたが、その後、新国立競技場のデザイン問題に始まり、ロゴマークのパクリ疑惑、不自然なボランティアのユニフォーム意匠問題などが発生。せっかくの五輪開催という機会なのにさまざまな不祥事ばかりが目立つ奇妙な状況となっている。

とはいえ、選手らにとって“TOKYO 2020”はもう目前に近づいて来ている。筆者も少なからず五輪関係の事業に携わっているのだが、その一コマをご紹介したい。

いま日本全国の自治体は「事前合宿チームの誘致」に躍起だ。事前合宿とは、各国の代表チームが選手村に入る前に、時差や気候に身体を慣らすことなどを目的にトレーニングを行うものだが、これを「わが町わが村でやりませんか?」と各地の自治体が誘いをかけている。このときとばかり、五輪を機会に「国際交流」、そしてあわよくば全国、いや世界にわが町の名を広めて「地方創生」につなげよう、というのが大きな趣旨となっている。

しかし、プロ級のアスリートを呼んで「練習してもらおう!」と言ったところで、現実はそんなに簡単ではない。そもそも体育館や各種の競技場といった練習施設、およびそれに付随する設備(冷房が未整備のところも少なくない)のレベルが国際水準から大きく劣る、競技用施設があっても外国人対応できる宿泊施設やレストランがない、といった問題が最も大きい。さらに、誘致を実現まで持って行くために日本側と現地側とをつなぐ人材がいない、いざ誘致が決まっても詰めが甘くてトラブルが起こる、練習相手を見つけられない……など、問題は山積だ。ひどいケースでは合宿先が選定されたものの、「日本側の対応が悪い」として、契約解消をちらつかせる団体もあるなど、なかなかハードルは高い。

また、人材の確保にも大きな問題を抱えているようだ。日本のスポーツ界にも各国のスポーツ事情通や、諸外国とのコミュニケーションの間に入れる優れた人材が少なからずいるはずだ。せっかくの自国での五輪開催という機会なのに、どうもそういう人々のアクティブな様子が伝わってこない。

「事前合宿の誘致」にこそ、国際的感覚に長けた人材の活躍が望まれる。

 

«さかいもとみ /プロフィール»
「合意なきEU離脱」に向けて喘ぐ英国・ロンドンに在住。今年はラグビーW杯が日本で開催。各国代表チームのお手伝いもあり、東京五輪までは日本と欧州各地を行ったり来たりになる見込み。物書き、としては鉄道ネタや世相ネタを書くことが多いですが、まぁどんな切り口でもなんでも書きます。東洋経済オンラインにだいたい週1の割で登場中。