5 学歴と社会体験を凝縮した「履歴書」/ドイツ

ドイツで履歴書(Lebenslauf)が必要になるのは、1.生徒が職場実習や研修をする時、2.大学入学応募時、3. 就職活動に面した時などだ。

CV記載見本

だが、これらの応募時に履歴書だけを提出するのではない。履歴書フォームCV (Curriculum Vitaeラテン語)に加え、簡単な自己紹介や応募理由を記した手紙、成績表、学校クラブ活動での経歴や余暇時間に取得した証書(語学や音楽レッスンなど)や技能証明書などを1セットにして応募するのがドイツ式。

書類を準備する手順は、まずCVに貼る顔写真(Bewerbungsfoto)を用意することから始まる。スーパーなどに設置されている自動写真機や自宅のPC で作成する人もいるようだが、やはり第一印象が大切と、写真専門店へ出向くのが一般的。写真は、出来上がるまで2週間ほどかかり、4枚入りで40ユーロほど。節約好きなドイツ人も自分の将来を託すCV用写真には財布の紐も緩むようだ。CVは、いままで市販品フォームに手書きをしていたが、最近はPCでダウンロードして作成する方法が主流だ。

履歴書をはじめ応募書類を入れる専用ファイル

提出書類で重要なのは、成績表に内容証明の公証実印が押されていること。この認証は、在籍した学校あるいは居住地の市役所で手続きをとって記してもらう。さらに、ボランティア活動や社会体験でこれまでどんな分野でどんなことを何の目的にしていたのかなどにも審査の比重が置かれるため、応募者は、これまでの活動が証明できるありとあらゆる書類を添える。以上の書類がそろったら、専用ファイル(Bewerbung Mappe )(画像2)にまとめて応募する。学歴や成績も重要だが、応募者の社会体験いかんで面接にこぎつけることができるのもドイツの特徴だろう。

ところで、今ドイツでは「就活時に履歴書の氏名や顔写真なしで応募してもいいのでは」という意見が話題を集めている。国民約8200万人のうち移民数は約1割。成績優秀にもかかわらず、外国人名だと書類選考ではじかれてしまうというケースが度々あり、社会問題となっているからだ。

シュピッツナーゲル典子/プロフィール

ドイツ在住ライター。出版社勤務、ドイツ外資系会社を経て渡独。チェコ・プラハ滞在4年を含めて、欧州での生活は20年を過ぎた。欧州を中心にビジネス、生活情報、医療関係、書籍分野や文化などをテーマに発信中。日本語教師や料理の講師としても活動。2児の母親。www.norikospitznagel.com