155号/夏樹

12月末から、チュニジアとエジプトでは大規模な反政府デモが起きている。数十年にわたって人々の言論の自由を奪い、欺瞞に満ちた司法権を欲しいままにしてきた大統領が国外逃亡を余儀なくされた。民主主義を求める市民たちが声をひとつにして勝ち取った歴史の一コマだ。 それにもかかわらず、フランスの外務大臣は年末のバカンスをチュニジアで、それも強権政権を牛耳ってきたベンアリ前大統領の親戚の接待で過ごしたことが暴露され、国民を呆れさせた。年末といえば、チュニジアの各地で反政府デモが勃発していた時期だ。1878年から1956年まで宗主国であったフランスの外務大臣がそれを知らなかったはずがない。しかし彼女の答弁は「個人的なバカンスで接待に応じてなにが悪いの?」であった。日頃、地下鉄に乗らず黒塗りの送迎車で移動し、自分で買い物をしないのでパンや牛乳の値段も知らない、そういう人々は、飢えて怒れる民衆の頭上をプライベートジェットで飛んで、接待バカンスに行くことに疑問をもたないのだ。

レベルは異なるが、先進国に暮らしている私も、このような無神経さ、傲慢さをもっているのでは?と自問することがある。リベラリスムの暴力に翻弄される国々の人々の日常生活を、彼らがどうやって毎日食べているかを、何を我慢しているかを知らなさ過ぎる。

新企画コラム、『こんなのあり?我々は見た』は、各国のライターたちが毎日の生活を基にして書いたものだ。プライベートジェットからの視点ではなくて、「ふつうの人々」の視点を切り口に異文化を垣間見ることができるのでは?と期待している。

〔夏樹/フランス・パリ在住〕