第4回 商売より大切なこと

連載:『サモアの想いで』
文・写真:椰子ノ木やほい(ミシガン州・アメリカ合衆国)

サモアには、どんな僻地の村にも小さな店がある。キオスクのような小屋で所狭しと調味料、食品、雑貨などが売られている。車を持たない人々にとっては、手近に最低限の生活用品が手に入りありがたい。経済的にけっして楽ではないサモアの人々は、必要なものを必要なときに要るだけ買う。タバコを1本、バンドエイドを1枚、飴玉1つといった買い方だ。お客のほとんどは顔馴染み。店での人と人とのふれあいは、私が小さかった頃の駄菓子屋を彷彿とさせた。

サモアで暮らしている間、子どもたちは学校帰りに、お決まりの店に立ち寄り買い食いすることが、ささやかな楽しみであり、日課だった。小銭を握りしめ、アイスポップと呼ばれる氷菓子やバラ売りの飴、中国製の乾燥梅干を1つだけ買い、それを口にほおばりながら帰宅した。

ある時、息子はニコニコ顔で家路に着いた。

「今日は、友だちと3人で寄ったんだ。オレしかお金を持っていなかったけど、1人分のお金でちゃんと3個買えたんだよ」

おいおい、ちがう……。ギンギラギンの陽射しの下、友だちといっしょに冷たいアイスポップを食べながら下校し上機嫌の息子を眺めた。

自分の日課を果たすため、いつものとおり20セネ(約10円)でアイスポップを1つ買ったら、お店のお兄ちゃんは子どもの数分くれたのだ。分かち合いを基本とする、サモア社会ではありがちな展開だ。商売ととらえれば、そんなことをしていては、成り立たないだろう。それでも、毎日顔を見せてくれる子どもたちが、そろって笑顔になれることの方が大切だ。

翌日、「いつもありがとうね」と店のお兄ちゃんに挨拶すると、“Fa’aSamoa! (これがサモア流さ!)”と苦笑いしながら私にもアイスポップをくれた。“人情”という言葉が浮かんだ。人に対する思いやりや慈しみのない社会は、いくら裕福でも寂しいものだ。激しい競争社会で計算高く生きているうちに、こうしたぬくもりをつい忘れてしまわないよう心に留めておきたい。

≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
フリーランスライター。1997年、受験のない世界での、のんびりゆったり子育てと、シンプル&スローライフを求めて、家族(夫・子ども4人)で南太平洋の小国サモアに移住。4年間、南国生活を楽しむ。思春期に向かう子どもたちにとっての、より適切な環境を模索する中で、2001年より、アメリカ合衆国、ミシガン州に在住。関連サイト:サモア時代のリアルタイムを伝える、「Talofa lava from Samoa」我が家が日本を脱出してからの記録「ぼへみあん・ぐらふぃてぃ」、海外在住ライター、フォトグラファーを支援するサイト「海外在住ライター広場」