第8回 海で過ごしたイースター

連載:『サモアの想いで』
文・写真:椰子ノ木やほい(ミシガン州・アメリカ合衆国)

子どもたちの歓声と波の音を聴きながら、沖合いのリーフで真っ白く砕け散る波をぼんやり見つめている私がいた。2000年イースター休暇のことだ。

サモア・ウポル島の東端に位置するアレイパタ海岸は、サモアを代表する美しいビーチのひとつ。せっかくの休暇を家族でのんびり海で過ごそうということになり、泊りがけで出かけたのだ。泊まりと言っても、ゴージャスなホテルがあるわけではない。海岸脇には、畳6畳ほどの床が組まれた場所に、簡素な屋根と柱だけをあしらった、ビーチファレと呼ばれる休憩所が立ち並んでいる。いくらか払うと、寝具と蚊帳を貸してくれるので、そこで雑魚寝というのがサモア流だった。

どうしたらこれほど透き通れるのだろう、と思えるほど澄みきったエメラルドグリーンの海面は、太陽の光が反射してキラキラしていた。絵葉書から飛び出したような景色は、いつまで眺めていても飽きなかった。波が寄せては返る単調な音を聴きながら、水中をスイスイと動き回る魚たちにパンくずをやってみたり、砂遊び、貝殻探し、釣りとのんびり流れる時間の中で、大自然を相手にクタクタになるまで遊んだ。

陽が落ちると、外灯のない夜の海から見える空には、満天の星が輝いていた。地球上に住むだれもが見る、世界と続く夜空だったが、私には特別な空に見えた。簡素なファレで過ごす質素な旅だったけれど、「平和なとき」を絵に描いたようなシーンの連続を今も鮮明に想いだす。ここにあったものは、空、海、風、静かに流れる時間、そして笑い声だけだった。忙しい日々に追われて、疲れを感じるとき、私はこのときの“時空”が恋しくなる。

≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
フリーランスライター。1997年、のんびりゆったり子育てと、シンプル&スローライフを求めて、家族(夫・子ども4人)で南太平洋の小国サモアに移住し4年間の南国生活を楽しむ。2001年より、アメリカ合衆国・ミシガン州在住。日本脱出時から早10年が過ぎ、当時の子どもは大人になりつつあるこの頃。HP『ぼへみあん・ぐらふぃてぃ』