第10回 釣り

連載:『サモアの想いで』
文・写真:椰子ノ木やほい(ミシガン州・アメリカ合衆国)

南太平洋に浮かぶ島国サモアは、当然のことながら海に囲まれている。我が家が暮らしていたアピアの家から海辺には車で5分。子どもたちの学校がお昼過ぎに終わり帰宅。宿題を済ませ、ひと遊びしギンギンの太陽が傾いた頃には、毎日家族揃って釣りにでかけるのが日課だった。

息子たちが釣りをしているあいだ、私は海風に吹かれながら夕日が沈むのを見て、夕方の海に水浴びに来る人々に「マロー!」と挨拶を交わす。毎日それを続けているうちに、いろんな人と顔見知りになり常連さんがわかってくるから不思議だ。風が吹くと、プルメリアのいい香りが漂って来た。花を摘んでみたり、芝生に寝そべって昼寝をしたり読書をしたりしながら、釣りが終わるのを待った。運良く魚が釣れた日は釣った魚が食卓に上った。

釣りにまつわる危ないエピソードもある。ある時、夜釣りを楽しもうと釣竿を投げたら、釣り針が後方にいた末息子の二の腕に刺さった。つまり、魚の代わりに腕を釣ってしまったのだ。釣り針には返しがあるので抜こうにも抜けない。結局、青年海外協力隊の獣医として活動していた隊員にメスを入れてもらい、緊急摘出手術をしてもらうというドジな顛末となった。以来、夜釣りは危険なのでやめたが、そんな釣りを楽しんだ日々が今となっては懐かしい思い出だ。

≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
フリーランスライター。1997年、のんびりゆったり子育てと、シンプル&スローライフを求めて、家族(夫・子ども4人)で南太平洋の小国サモアに移住し4年間の南国生活を楽しむ。2001年より、アメリカ合衆国・ミシガン州在住。日本脱出時から早10年が過ぎ、当時の子どもは大人になりつつあるこの頃。HP『ぼへみあん・ぐらふぃてぃ』