第1回 ソーラーを学ぼう

2022年に脱原発を決めたドイツでは、原発の代替として自然エネルギーが注目を集めている。2011年には消費電力の17%を、太陽光、風力、バイオマス、水力などの自然エネルギーでまかなった。

日時計、ソーラーパネル、ソーラー温水器があるエネルギー広場

ちょうど大寒波の今(2012年2月)、原発で8割の電力をまかなうフランスが電力不足に陥り、ドイツから自然エネルギーを購入する事態となっている。電力輸出国のドイツは、自然エネルギー推進とともに、省エネや電力効率化にも力をいれている。 自然エネルギーの重要性について子どもたちに教えようと、北ドイツの環境教育施設・ハノーバー学校生物センターでは、ソーラーエネルギーについて授業をしている。ちなみに同センターはドイツ最大の環境教育施設で、市内の子どもたちが学校のクラス単位でやってくる。1時間だけのこともあれば、3日間通うことも。動植物を観察したり、蜂の巣から蜜を取ったり、野菜を育てるなど体験学習ができる。 太陽はすべてのエネルギーの源で、火をおこしたり、湯を沸かしたり、電気を生むことができる。火を危ないと遠ざけたりせず、いろんな利用方法があることを学ぶことは、自然のしくみを理解することにつながる。

ソーラークッカーで調理

まず、太陽の光を手鏡で反射させてみる。遠くまで照らしたり、みんなで一点に集めた。ひとりが真ん中に立ち、その人に光を集めると熱いことがわかる。虫眼鏡を使うと、白い紙では難しいが、黒い紙だと容易に火がつく。大きなパラボラアンテナの中心に置いた鍋で、ご飯やスパゲティーを作る「ソーラークッキング」も人気だ。

園内にはエネルギー広場があり、日時計や太陽光発電装置、ソーラー温水器などがある。地面には白い石と黒い石が敷き詰められ、裸足で歩くと温度の違いが実感できる。季節によって太陽の昇る位置、沈む位置が変わることや、日時計での時刻の計り方など体験しながら学べる。

熱の吸収率や、太陽系の成り立ち、発電のしくみなど子どもの年齢にあわせて多様な授業が可能。インゴ・メナリッヒ教諭は「福島原発の事故をきっかけに、エネルギーについて興味を持つ子が増えた。中には自分でいろいろ調べている子もおり、授業で討論するなど盛り上がっている」と話し、力を入れている。

田口理穂/プロフィール
日本で新聞記者を経て、1996年よりドイツ在住。州立ハノーバー大学社会学修士。ドイツの環境、生活事情、ビジネスなど幅広く執筆。2011年12月に共著『「お手本の国」のウソ』(新潮新書)を発行。キリスト教ではカーニバルが終わると、復活祭(今年は4月8日)までの40日間断食をすることになっている。断食といってもチョコレートやインターネットなど好きなものを一週間断つだけでも、キリストの苦難を追体験する効果があるとか。