第2回 環境にやさしいホテル「フィア・レーベン」

フィア・レーベンとは、「4頭のライオン」という意味。ホテルの正面にはライオンの頭が4つある看板がかかっています。南ドイツにある1950年創業の家族経営のホテルで、シュバルツバルト(黒い森)で環境にやさしい「自然公園ホテル」に認定されています。

1986年にチェルノブイリ原発で事故が起きたとき、オーナーのウォルター・カーレさんの娘は3歳、息子は1歳でした。ドイツの牛乳から放射能が検出され、「ポーランドやロシアのキノコをレストランで使っていたが、出すことができなくなった」といいます。このあたりでは、26年たった今でも野生のいのしし(イノシシ)やキノコから放射能が見つかっています。

オーナーのカーレさん夫婦とお孫さん

カーレさんは原発の危険性を身を持って体験したことから「原発がいらないように」と1999年にコジェネレーションを導入しました。電力と熱の両方を生み出す効率的な設備で、これにより暖房やお湯の半分をまかなっています。給湯器も省エネタイプのものに買い換え、20ある客室では省エネ電球を使用しています。13年前に増築した際、地元の木を壁に使い、断熱効果の高い窓を入れました。ベッドのシーツはオーガニックコットンで、カーペットは30%が羊毛。料理には地元の野菜を使い、アフリカからの安いバラは買いません。現地の労働者は悪条件のもと搾取されているからです。

環境に負荷をかけないものは初期投資がかかりますが、省エネによる節約で数年で元が取れます。例えばコジェネレーションは、4年で元が取れ、今も節約を続けているとか。足りない分の電力は、反原発運動から自然エネルギー供給会社に発展した「シェーナウ電力会社」から調達しています。

環境に配慮した素材を使っている客室

こういうと真面目でエコ一辺倒に聞こえますが、泊まってみると家庭的な雰囲気の普通のホテル。奥さんが南ドイツの典型的な民族衣装で迎えてくれ、素材の味を生かした食事は絶品です。29度のウェルネスプールやマッサージで心身ともにリラックスでき、近くの森で自然散策やスキーも楽しめるので、長期滞在者にも人気です。

参照 http://www.vier-loewen.de/ (ドイツ語のみ)

田口理穂(たぐち りほ)/プロフィール
先ごろ、ドイツで初めてプレス証を手に入れました。ヴェルディという労働組合が発行しているもの。これで堂々とあちこち取材に行けます。初めてプレス証でミュージアムを訪ねたときはうれしかったなあ。ドイツでジャーナリストとして認められている、と一人で悦に入りました。あとはいい記事をたくさん書くのみです。