173号/プラド夏樹

原爆を思いださずにはいられない8月、福島第一原子力発電所事故から大飯原発再稼働強行へというプロセスに対して、新たな怒りを感じざるをえない。それと同時に、紫陽花革命が8月も続いているという嬉しいニュースを聞いた。

話は一転するが、最近、『パリの石畳』というドキュメンタリー映画を見た。フランスでは、石畳というと怒りを連想する。怒った民衆が石畳を引きはがしてバリケードを作ったり、鎮圧しに来た軍隊や警官に投げつけたフランス革命、そして1968年の5月革命を背景にしているのだが、事実、パリは世界でいちばんデモが多い都市なのだそうだ。警察の報告によると2011年のデモ数は3655件。日に10件のデモという計算になり、3年前より78%多くなっている。

お天気が良くなり始める5月はもっともデモが多い月で、今年は、モロッコ反体制派、チュニジア反体制派、タイ反政府派、コートジボワール前大統領バボ派、経済省役人、プール監視員、その他、闘牛反対、精神科改革反対、原発反対、食品添加物反対グループなどのデモが相次いだ。

アフガニスタン戦争反対デモのときだったろうか? ふと空しさを感じて、一緒に行ったフランス人に「どうせ政府は国民の言うことなんて聞かないのに、デモすることになんの意味があるの?」と聞いたところ、「デモが続けば、政府は絶対に弱体化するから。長期的に見なきゃ」と言われたことがある。

残暑の厳しさにかかわらず続く紫陽花革命、そして地球丸前号から始まった大堀功美子さんの連載「福島を想う、がんばっぺいわき」。ひとりひとりが発信し続けることの力を信じたい。

(プラド夏樹/フランス・パリ在住)