第5回 親子で環境教育「森のステーション」

「リスの赤ちゃんはどこに住んでいるの」「モグラは何を食べているの」……子どもたちの質問に答えてくれるのが、ハノーファー市内北部にある「森のステーション Waldstation」です。市内に広がるアイレンリーデの森の一角に位置しており、市内まで自転車で10分ほど。森の中にある環境教育施設として、子どもからお年寄りまで多くの人でにぎわいます。

古い木がごろんと置いてある

3.7ヘクタールの敷地には、池や動物小屋、遊歩道が整備されています。鳥小屋では、病気や怪我をした鳥を飼っており、完治したら自然に返します。さまざまな巣の見本があり、自分たちで手作りできるよう、穴の大きさや鳥の種類、材料費について書いてあります。遊歩道にそって歩くと、木や花の特徴がよくわかり、アリの巣やコウモリの生態も観察できます。もちろんリサイクルやコンポストなど、私たちの生活と関わる視点も提供されています。

見晴台を登る途中で学習

特筆すべきは、高さ32メートルの見晴台。市役所や教会、駅、サッカー場など市内全域が見渡せます。いつもは見上げている木を、上から見るのもなんとも愉快です。この見晴台は木造で、2009年に完成。登ってくる途中に、針葉樹や鳥の卵、リスなどテーマごとに学習できるよう工夫がこらしてあります。子どもたちは景色のよさ、緑の濃さに驚き、歓声をあげて喜んでいます。たくさんの人が上ってくると、ぐらぐら揺れるのも魅力です。

同施設では、グループや学校のクラスに環境教育の授業もしています。実際にイタチがネズミを食べている様子を見たり、網をもって水中生物を捕獲するなど、体験授業が可能。目をつむって森の中を歩いたり、腐った木を調べたり、五感を大切にしています。室内では小枝や草など自然な素材で工作をしたり、手仕事もできます。

のんびり自然の中で深呼吸するだけでも安らぐというもの。春の気持ちのいい日差しの中、自然と触れ合うにはもってこいの場所です。もともとドイツ人は森を散策するのが好きだけれど、小さいころからこのような場所に足を運んでいれば知識も深まり一石二鳥。入場料無料。見晴台のみ1ユーロ。

参照:http://www.hannover.de/de/umwelt_bauen/umwelt/umw_bera/wasteile/ (ドイツ語)


田口理穂/プロフィール
小さいころピアノを習っていたのですが、最近また弾くようになりました。ピアノと通訳は、いくつも類似点があるように思います。ピアノは何年も練習しなければならないし、外国語を学ぶのも時間がかかります。目で見た音符を指の動きに変換することと、耳で聞いた言葉を別の言葉にして口から出すことも、基本は似ています。気が散っているとうまくできないけれど、準備を万端にしていればうまくできる。少々のミスなら、周りに気づかれずに先に進める。どちらも長年の訓練が必要な技能です。そし上手にできたときは、なんともいえない充実感をもたらしてくれる。奥が深いから、楽しみも底なしです。