第4回 モンブラン - Mont Blanc aux marrons -フランス

旬の味がひときわ楽しめる食欲の秋、決まって食べたくなるスイーツといえば、なにをおいてもモンブラン! しっとり甘いマロンクリームとふんわり生クリームの取り合わせの妙が秀逸な逸品だ。

日本でモンブランといえば、カップケーキやスポンジケーキの上に生クリームと黄色いマロンクリームがトッピングされていて、中に栗の甘露煮が入っているものをイメージする人が多いだろう。これは、日本のモンブランの発祥の店、その名も「自由ヶ丘モンブラン」のものがそのベースになっていると思われる。

一方、フランスのモンブランは焼いたメレンゲの上に生クリームと茶色のマロンクリームが乗ったもので、高く盛り上げた形がアルプスのモンブランを思わせることから、その名がついたといわれる。由来には諸説あるが、アルプスの麓、フランスのサヴォワ、イタリアのピエモンテあたりの家庭で親しまれていた栗と生クリームのデザートが原型とする説が有力。

そして、フランスのリゾート地、ニースで評判だった菓子店が1903年、パリに開いたサロン・ド・テであるアンジェリーナの看板メニューとなったことから、当時のセレブに愛され、定番のスイーツとなった。そのアンジェリーナが1984年に東京へ進出し、日本でもパリの店と同じモンブランが食べられるようになったのだ。

しかし、いくらスイーツ大好きは食いしん坊とはいえ、ときに途中で「もぅいいかな……」と思ってしまう甘さとボリュームなのが欧米のお菓子。アンジェリーナのモンブランもかなりの大きさで、ケーキやスポンジ部分がない分いくらか軽めとはいえ、女性ならひとつ食べればランチ代わりになりそう。もちろん、お値段もお手頃なランチ並である。

日本の文化からすれば、おいしく味わうには、腹八分目がよかろう……というわけで、なんと日本のお店にはパリ本店のボリュームの半分のデミサイズなるものがある。もちろん、お値段もややカワイイ。写真のモンブランがそれで、ティーカップの大きさと比べても、これで充分なサイズなのがおわかりいただけるだろう。

さらに、オリジナルのほかに月替わりの限定商品、マンスリーモンブランというのもある。ちなみにこの10月の商品は、ハロウィンにちなんでマロンクリームに北海道産のカボチャペーストをブレンドしたパンプキンモンブラン。リピーターを楽しませる工夫も日本らしい。

世界中の名店がしのぎを削り、特にパティスリーのレベルは世界のトップクラスの東京では、本場さながらの味と日本ならではの季節感あふれる味わいのどちらも楽しむという贅沢が叶うのだ。月替わりの味を確かめに、秋だけでなく毎月通ってみてはいかが?

◆サロン・ド・テ アンジェリーナ プランタン銀座本店

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。すっかり涼しくなって、おいしいものが盛りだくさんの秋、今回は本場フランスのスイーツをご紹介! 今後も、ときに世界各地に暮らす執筆陣の現地情報も織り交ぜつつ、日本で楽しめる世界の味の魅力をお伝えします。