第6回(最終回)冬休みの子どもたち

ロンドンの今年の冬は、とてつもなく寒い。毎朝、外に出るとうっすらと白く霧がかかっていて、冷たくきんきんとした空気が立ちこめている。それでも子どもたちは、とにかく元気いっぱい。待ちに待ったクリスマスがもうすぐそこだから。街中にイルミネーションがあふれ、店にはリースが飾られる。デパートやミュージアムへ出かけると、サンタさんがサンタグロット(サンタの洞穴)で、子どもたちを出迎えてくれる。学校では、ナティビティプレイ(聖誕祭)の練習にいそしんでいるのだとか。そしてこの時期、一年間がんばった子どもたちには、ご褒美に、たくさんの楽しいイベントが待っているのだ。

例えば先日遊びに行ったキッズディスコ。子どもたちのためのディスコダンスイベントだが、なんと会場は、 毎晩音楽好きのロンドナーが集まる人気の大型クラブ。もちろん真夜中ではなく、日曜日のお昼に開催されるのだが、いつもドレスアップした若者たちが並んで入場を待つ「ミニストリーオブサウンド」というクラブ前に、バギーとキッズが行列を作っていたのは、とてもシュールな光景だった。中に入ると、耳のよいオーディエンスが集まるといわれる自慢の音響設備を使って、キッズ・ミュージックや、ディスコ・ミュージックが流れている。 フロアごとに、趣向を少しかえて、様々な音楽やイベントが開催されているのも、大人顔負けだ。メインのフロアではマジシャンやピエロが、目の前でマジックを披露してくれるし、隣のフロアではオールディーズ・ディスコ・ナンバーに合わせて、 ダンサーが簡単な振り付けをレッスンしてくれる。子どもたちは、すぐに振り付けを覚えて楽しそうに体を動かしていた。いつか、息子がクラブ通いなどするようになった時、親同伴で出かけたこのディスコのことなど思い出すのだろうか。

そしてもうひとつ、冬のロンドンのお楽しみと言えばこれ。2007 年に始まって以来、 6回目を迎える「Winter Wonderland(ウィン ター・ワンダーランド)」。 日中は移動遊園地で子どもたちが歓声をあげ、日が落ちると、いくつものライトがアイスリンクに瞬き、ファンタジックな雰囲気を醸し出す。子どもも親も、みんなたっぷり楽しめる冬の祭典だ。よく見ると、例年さほど変わりはない趣向なのだが、だからこそ少しずつ、子どもたちの興味の対象が変わって行くのを見ることができる。例年、電車の乗り物にのみ一目散だった息子は、今年サーカスに目を丸くし、恐る恐るスケートリンクへ踏み出した。

振り返って考えてみると、息子の一年間もなかなか慌ただしく、変化に富んだものだっただろう。昨年の今頃は、レセプション(義務教育直前の学級、この次の学年から一年生)にあがったばかりだった彼も、今では一年生になり、ニューメラシー(算数)、フォニックス(綴り字と発音)といった勉強に励むようになった。なんでもすぐにできるようになるタイプでは、どうやらないようだが、少なくとも学校生活を楽しんでいる様子にほっとする。わたしも、毎日のスクールランと呼ばれる学校の送り迎えがあり、夏にはオリンピックがあり、公私ともにたくさんの経験をした得難い年だった。クリスチャンではないのだが、このホーリースピリットがあふれる季節、無事に過ごせた一年を誰かに感謝したい気持ちになる。どうぞ、みなさまも素敵なクリスマスをお過ごし下さい。

平川さやか/プロフィール
フリーライター/フォトグラファー/メディアコーディネーター。
北海道札幌市生まれ。ファッション、インテリア、旅、キッズの分野を中心に、取材、撮影、執筆を手がける。年末はロンドン・ガイドブックの制作に携わることが多く、あちこち取材に走り回っています。夫と息子と白黒の猫とロンドン・ハムステッド在住。猫とお笑いと旅が好き。
ヴァージンアトランティックのブログVもよろしくお願いいたします。