第1回 世界初! 木造支柱の風力発電装置

北ドイツのハノーファーで先ごろ、木造の支柱による風力発電装置が稼動を始めました。商業用設備での木造支柱というのは、世界初。序幕式にはアルトマイヤー環境大臣やマックアリスター州知事も参加するなど、注目を集めました。木材という自然資源を使った設備で、再生可能エネルギーを生み出すことに意義があります。

この風力発電装置は、ハノーファー出身の二人が起業したティンバータワー社によるもの。高さ100メートルで、支柱の重さは約192トン。1.5キロメガワットの容量を誇り、1000世帯分の電力をまかないます。トウヒや白松の板を接着し、表面を特別ビニールで覆いました。州立ハノーファー・ライプニッツ大学の敷地に建設されました。

このプロジェクトには、過去5年に550万ユーロ(6億円)が投資され、うち60万ユーロ(6600万円)は州からの補助金でした。将来的には145メートルの高さも可能だとのこと。同社は2013年には10 基製造し、2014年から量産に入りたいとしています。

木は自然資源であり、再生可能な素材です。値上がりの激しい鉄鋼と違って材料費は安定しており、地元の木材を使えることから地域復興の役割も期待できます。寿命がくれば、支柱は解体され、木材はリサイクルに。木造支柱はいずれ、鉄鋼よりもコストが1~2割削減になるといいます。

ドイツでは現在約2万3000基の風車があり、2012年前半期は全電力の9%をまかないました。北海やバルト海に面したドイツ北部に風力発電が多く、日照時間の長い南部でソーラー発電が多い傾向があります。しかし産業が盛んで電力消費が大きい南部は、ソーラーだけではまかなえないため、少々条件が悪くても風力発電装置を建設しようという動きが広まっています。木の支柱による風力発電装置は、「黒い森」など緑豊かな南部で新たな産業を生むきっかけになるかもしれません。

ティンバータワー社のサイト(英語)

田口理穂/プロフィール
クッキーモンスター事件、みなさんお聞きになったでしょうか。ハノーファーの老舗クッキー会社バールセンのクッキー形の看板を、クッキーモンスターのぬいぐるみを着た誰かが盗み、「子ども病院にクッキーを、動物保護施設に1000ユーロを寄付せよ」と脅迫。会社が「52の福祉施設に5万2000箱のクッキーを贈ろうと約束すると、看板はハノーファー・ライプニッツ大学の馬の像にひっかけられているところが発見されました。この大学は私の母校。看板には「ライプニッツクッキー」と書かれており、それをライプニッツ大学に返すなんてしゃれています。ともあれ無名なハノーファーが世界中のメディアで報道され、ハノーファー人はほくほく顔です。