第12回 タンガに替えてキンコンイチバン

先日、懐かしくも「チューリップ」の『青春の影』を耳にした。中学のころはテスト中でもライブに行ってしまうほどのファンだった。

~~自分の大きな夢を 追うことが 今までの僕の 仕事だったけど
君を幸せにする それこそが これからの僕の生きるしるし~~ ♪♪

まだ20代だったころの夫が、「財津和夫にこの曲の真意を聞いてみたい」と言っていたことがよみがえった。「結婚しちゃって、これで自分の夢も終わりだな」と解釈して口から出たセリフだったのではと当時は推察した。夫の夢がその後どうなのか?思いどおりの生き方ができているのかはさておき、久々に歌を聴いて、そういえば、あのころのわたしは、女は男に幸せにしてもらうものだと思っていたな……なんてことまで思い出した。

時代の流れとともに女性の社会進出があたり前となり、男女問わず、家庭より自己実現!子どもを持たない夫婦や結婚を望まないカップルなども増えてきたことを思うと、そのような発想は、「恥を知れ!」と一喝されそうだ。30年夫婦を続けてきた今となっては、さすがにどちらかが、どちらかに幸せにしてもらうなんて虫のいい話はないとわかった。

そもそも、「幸せにする」とか、「幸せになる」ってのは正しくない。幸せはそのときどき、感じるものだ。実際、わたしが幸せと感じるときは、家族でおいしく食事を終えるときとか、週末にワイン片手に白カビチーズかじっているときとか、息子が演奏するライブを追っかけているときとか……平穏だからこその些細な瞬間にある。どんなに幸せでも、その直後最悪な不運に見まわれ不幸のどん底に陥ることは、生きている限りだれにでもあるのだから、手に入れた幸せなんて儚いものだ。

若いころは、夫の機嫌が悪いというだけのことも不愉快だった。不機嫌な理由はさておき、「不機嫌な夫」に腹をたて、自分は不幸だと感じた。自らを棚に上げて、相手に要求ばかりはじめれば、夫婦喧嘩が勃発し泥沼にはまった。「世界一幸せにするとか言ったくせに、この大嘘つきやろう!」と思ったものだ。今では、お互いが大人になったので、そこまでつまらない諍いはない。夫婦関係にしろ、親子関係にしろ、若いころほど認め合うことが下手だったし反省することは多い。振り返ると、「あんな言い方しなければよかった」とか「それは言うべきでなかった」「どうしてそんなことで腹をたてたのか?」なんてことだらけだ。

やれば何でもできてしまう夫からは、「どうしてこんなこともできないんだ?」と言われ続けて生きてきた。おかげで成長できたことはたくさんあるけれど、ついでに言い返す能力と開き直る力も身についた。今では、「わたしってだめね」とやりすごすスルー力と、「だからあなたが必要なんでしょ」といった持ち上げ力も習得した。年中ハッピー家族なんてあり得ないのだから、お互いのちょっとの気配りで、苦しみを和らげたり、機嫌を取り戻したりしながら、少しでも気分よく暮らしたい。年とともに、多少なりともそのための賢さが備わってきた。

子育ても終わり、親も年老いてきて、健康に不調のでてきた友人の話を聞くようになり、今さらながら、人生に限りがあることを意識し始めている。実際、夫婦の会話の中でもことあるごとに、「早くしないと死んじゃうのでいまのうちにしておこうよ!」なんてセリフが飛び出す。ちょっと大げさかもしれないけど、「限りある人生に、幸せを感じる回数が少ないのはもったいないな」とまで思うようになった。

その意識は、いろんなところで変化となって表れている。たとえば、これまでは家計を預かる主婦として、残飯整理を担当してきたけど、体の適量を超えてまで、「残さず食べる」は「おいしく終わる」「体に優しく」に反するのでやめた。ことの終着点は「もったいない」ではなく「心地よく」だ。

34年前に買ったお気に入りのビキニを引っ張りだして着てみた。2013年12月メキシコ・カンクンにて。

子どもを持って以来まさに“髪振り乱し”でやってきたので、おしゃれもどうでもよく、母として活動しやすく経済的であればそれでよかった。が、ここにきて、じゃあこのまま老いとともにしぼんでいけばいいのか?と問いかけてみるとそれも惜しい。「もう若くない」を「まだイケル」に置き換えることにする。人目なんかまぁいいじゃん!ハイヒールにもビキニにも再チャレンジだ。

まわりに合わせて、なんでもスイッチオンにしていては、重要でもないことで忙しくなる。プライオリティに合わせたスイッチをオン、オフと切り替え、「しなければいけないこと」だけではなく、「したいこと」を優先している。

染み付いたライフスタイルを変えるには、少し時間はかかるかもしれないけど、意識すれば自分は変えられる。これまで失敗や反省を重ねつつも、それなりに突っ走ってきたのだから、そろそろ、がんばることより、「喜びや幸せを感じるためにどれだけエネルギーを注げるか」に、自分の限りを尽くしていきたいと思うこのごろである。

椰子ノ木やほい/プロフィール
年を取るほど1年が早い!とはよくいうがまさにそのとおり。三日坊主が得意なわたしが「フンドシ締め直す」と宣言し、今回なんとか最終回まで辿りつけた。わたしの2013年の日常にからめて好き勝手にほざかせてもらい、わたしにとっては、とても楽しいリフレクションタイムとなった。お付き合い下さった方々ありがとうございました。