第9回 行きつけの国~その6フィリピン~
フィリピンの離島にある楽園のようなビーチ

7109もの島がある国、フィリピン。2004年にアシスタント日本語講師として就労ビザで初めて入国した。その後しばらくガイドブックをつくっていたので、主要な島にはほとんど行ったことがある。フィリピンのよさは離島に尽きるのだが、運び屋として行くのは、大勢の人がいて工場があるマニラとセブのみだ。

現在、世界でもっとも店舗数が多いファーストフードは、1位がサブウェイで2位がマクドナルド。しかし、フィリピンでのシェア1位はジョリビーなのである。ジョリビーとはフィリピン国産のファーストフードチェーンだ。バナナケチャップを使った甘い味つけや白いごはんがついたフライドチキンのセットなど、フィリピン人の好みに合わせたメニューを特徴としている。

海外からの送金額が国内総生産の1割にもなる出稼ぎ大国フィリピン。ジョリビーがある国では必ずフィリピン人が働いている。サウジアラビア、クウェート、カタール、ベトナム、ブルネイ、香港、グアム、サイパン、そしてアメリカ本土にもある。

フィリピンを代表する大型チェーン店であるハンバーガーのジョリビー、中華のチャオキン、ピザのグリーンウィッチ、焼き鳥のマン・イナサル、ケーキのレッド・リボン、さらに世界的なベーカリー、デリフランスのフランチャイズを経営しているのは、華僑のタン一族である。

東南アジアの経済は華僑が握っているとよく言われるが、これはその典型例だ。マレー系フィリピン人は自らをピノイ、中国系フィリピン人をチノイと呼び、はっきりと区別している。人口的にはチノイは1パーセント強と少数派である。ちなみに、元大統領のコラソン・アキノも華人だ。

運び屋として来ているからには、屋台飯にうっかり中(あた)るわけにもいかず、衛生的なチェーン店で食べることになる。そのたびにタン一族にお金を落とすことになる。甘ったるいスパゲッティを食べながら、「華僑恐るべし」と南国フィリピンで毎度身震いしているのだ。

片岡恭子(かたおか・きょうこ)/プロフィール
1968年京都府生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒。同大文学研究科修士課程修了。同大図書館司書として勤めた後、スペインのコンプルテンセ大学に留学。中南米を3年に渡って放浪。ベネズエラで不法労働中、民放テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHKラジオ番組にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行誌に連載。蔵前仁一氏が主宰する『旅行人』に寄稿。新宿ネイキッドロフトで主催する旅イベント「旅人の夜」が6年目を迎える。ロックバンド、神聖かまってちゃんの大ファン。2014年現在、46カ国を歴訪。処女作『棄国子女-転がる石という生き方』(春秋社)絶賛発売中!

以下、ネット上で読める執筆記事
春秋社『WEB春秋』「ここではないどこかへ」連載(12年5月~13年4月)
カジュアルプレス社『月刊リアルゴルフ』「片岡恭子の海外をちこち便り」連載中(08年8月~)
東洋マーケティング『Tabi Tabi TOYO』「ラテンアメリカ de A a Z」連載中(11年3月~)
朝日新聞社『どらく』「世界のお茶時間」ハーブの国の聖なるお茶 Vol.22 ペルー・アンデスのマテ茶(10年2月)
朝日新聞社『どらく』「世界の都市だより」リマのひと マテオの口元ほころんだ(06年11月)
NTTコムウェア『COMZINE』「世界IT事情」第8回ペルー(08年1月)