第20回 マイレージ修行

唐揚げ丼を注文したつもりがチキンナゲットの下に潜んでいたのはマッシュポテト

1月末から2ヶ月で日本と南北アメリカ大陸の間を9往復した。内訳はアメリカが7回、カナダが1回、アルゼンチンが1回。その合間にインドネシア日帰りが1回。ロサンゼルスから帰国してその日のうちにカルガリーに飛んだり、ジャカルタから帰国してその夜にはロサンゼルスに飛んだりと、日々疲労困憊であった。

1週間に5日と半日が海外と飛行機の中で、残りの1日と半日が日本で洗濯だ。こうなるともはやどこの時間で生きているのかわからない。体力温存のためにとにかく眠る。飛行機の中ではなるべく眠りやすい席を確保する。肘掛を上げてエコノミークラスの横並び3席を一人占めするのはビジネスクラスに勝る。幸いANAでロサンゼルスに行くことが多かったので、プレミアムエコノミーでよく眠れた。

ずっと飛行機に乗っていると腰が痛むし背中が凝る。アメリカでのお粗末な食生活とブロイラーのような機内食の連続に加え、どうも振動が内臓に堪えたらしい。空腹なのだが食欲がない。胃酸過多で歯ブラシをくわえると吐き気がこみ上げる。機内の乾燥で髪はパサパサ、肌はカサカサ。重い荷物の上げ下げで手にタコができるわ、ロングフライトのたびに白髪がどっと増えるわ、文字どおりの足が地につかない生活である。

レアなアルゼンチン行きはドーハ経由で片道30時間かかった。2012年に打ち立てたフランクフルト経由サンパウロ行きの片道25時間という記録をしのいだ。しかも、スターアライアンスに加盟しているルフトハンザ航空ならラウンジでシャワーを浴びたり食事をしたりして休めるのだが、ワンワールド加盟のカタール航空はステータスがないのでロビーにへたりこむしかないのである。

蓄積する疲労に比例してマイレージはどんどん貯まる。ステータスの取得や維持のために身銭を切って飛行機に乗りまくるマイレージ修行僧のことを思えば、なんともありがたいのだが、繁忙期に集中する仕事をもうちょっと分散させられないものかと思わずにはいられない。

片岡恭子(かたおか・きょうこ)/プロフィール
1968年京都府生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒。同大文学研究科修士課程修了。同大図書館司書として勤めた後、スペインのコンプルテンセ大学に留学。中南米を3年に渡って放浪。ベネズエラで不法労働中、民放テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHKラジオ番組にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行誌に連載。蔵前仁一氏が主宰する『旅行人』に寄稿。新宿ネイキッドロフトで主催する旅イベント「旅人の夜」が7年目を迎える。ロックバンド、神聖かまってちゃんの大ファン。2015年現在、47カ国を歴訪。処女作『棄国子女-転がる石という生き方』(春秋社)絶賛発売中!

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