152号/凛 福子

外交問題における軟弱姿勢と、後手にまわってばかりの対応で窮地に立たされている日本。その後も問題山積で、いっこうに立ち直れそうな気配がない。そんなニュースにうんざりしていたところへ、先日、ひさびさに明るい話題が飛び込んできた。

予定外の7年にわたる長旅の末、地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルに、小惑星イトカワのものと確認された微粒子が入っていたというのである。もちろん、これは世界初の快挙。先をこされたNASAは悔しくてお祝いも送ってこなかった……などという眉唾もののウワサがまことしやかにツイッターを駆け巡るほどの偉業である。

この夏休み、私は一般公開されたこのカプセルを見に行った。時期はお盆まっただ中。例年にない酷暑の中、真夏に並んでただのアルミの塊を見に行くなんて気が知れないという意見も多々聞かれた。その気持もわからなくはないが、それでも私は見てみたかった。時間とお金さえあれば、物理的にはこの地球上のあらゆるところへ行くことができる今なお、私が生涯行くことはできないであろう宇宙には、果てしないロマンを感じるのだ。

はたして、もちろん行列はしていたものの、当初予想されたほどの混雑ではなく、2時間も待たずに展示を見ることができた。その間ほんの数分。「立ち止まらないでください」というアナウンスにしたがって展示ケースの前を通り過ぎるだけ。それでも、銀色に光り輝くカプセルを目の当たりにしたときは感動的だった。はやぶさそのものは、詩的に言えばまさに「星になった」という表現がぴったりの様子で燃え尽きたというのに、カプセルは満身創痍の姿だろうという素人の私の予想を大きく裏切り、とてもきれいだった。

技術大国日本の地位が揺らいでいる今、日本人の誇るべき技術、緻密さ、根気、努力、が発揮されるこの分野には、いっそう国力を注いでこそ、国際競争力をつけていかれるのではないだろうか?

(日本・東京在住 凛 福子)