210号/西川桂子

カナダ(バンクーバー)時間の7月31日。金曜の夕食を終えて、いつもより、のんびり過ごした後、コンピュータの前に座った私は愕然とした。父のケアマネージャー、M氏から10件ほどのメールが届いていたのだ。

2年前に軽度のアルツハイマー型認知症との診断を受けた父は、介護施設への入居を拒み、一人暮らしを続けている。今年になって症状が進み、「自分が自分でないように感じて不安だ」と市役所に電話をかけたり、ヘルパーが来てくれているのに外出して行方が分からなかったりと問題を起こして、これまでにも何度かM氏から連絡があった。

今回は何事かとメールを開いた。デイサービスが迎えに行くと、父が腰の辺りの痛みを訴えていて歩くこともできない状態だという。通常、利用している介護ヘルパーも、土曜日のため派遣所は休み。M氏もオフだったが、私たち家族と連絡がつかなかったため、父のところに駆けつけてくれたらしい。多数のメールは、その後の救急受診、緊急手術、入院まで、状況を逐一報告するものだった。

M氏の迅速な対応のおかげで、父は数日間、入院しただけで、自宅に戻ることができた。海外在住の私の場合、こまめに連絡をもらえたこともありがたかった。自身も障がい者の家族や、小さいお子さんを抱えているのに、父のために休日を返上してくれたM氏には感謝しきれない。

(カナダ・バンクーバー 西川桂子)