221号/原田慶子

南米大陸初のオリンピック、リオ2016が閉幕した。日本は過去最多の41メダルを獲得。いくつもの感動シーンに涙したオリンピック・ファンも大勢いただろう。

それにしても、近年これほど開催が危ぶまれたオリンピックも珍しい。ブラジルの政情不安と財政危機、治安の悪化、ジカ熱、加えてファベーラと呼ばれる貧困地区の強制立ち退き問題も大きく取り上げられ、「そもそもオリンピックなど開くべきではない」という否定的な意見まで飛び出した。なんとか開催にこぎつけたと思ったら、今度は選手村の設備に不満続出。とはいえ南米暮らしの身としては、「トイレが流れないくらいでそれほど騒ぐことか」と笑ってしまったが。

それでも最後につじつまを合わせてしまうところが、南米パワーの真骨頂。閉会式は素晴らしく、大いに盛り上がった。一方、残念ながらメダル獲得に至らず「スポーツ振興に力を入れない政府が悪い」との不満も漏れ聞こえたペルーだが、ラテンのお国柄、お祭り騒ぎに便乗するのは得意だ。リマ市アンコン区の刑務所では囚人オリンピックマラソン大会が開かれ、80人あまりの受刑者が所内7.5kmを完走した。楽しそうに走る彼らの顔を、モザイク無しでテレビ中継する大らかさ。「Correr para ser libre(自由のために走ろう)」というゴールの見えない大会スローガンも涙を誘う。日本人からすると「なんでそう適当なのか」と呆れるかもしれない。でも私は、彼ら南米人たちの心の余裕にいつも感心させられるのだ。

世界が大喜びしたという安倍マリオ。確かに演出は完璧だったが、登場と同時に衣装を剥いでしまったため、一瞬「あんた、誰?」と戸惑ってしまった。あの時にマリオらしくポーズを決める余裕があればもっとよかったのになぁ。次は2020年東京オリンピック。一人ひとりが心から楽しめる大会になりますように。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)