135号/夏樹

今回のバイリンガル教育にかんする座談会には、いろいろなことを考えさせられた。


私はバイリンガル教育に失敗した親なので、校正の段階でみんなの経験を読みながら、「あぁーこれをもっと前に読んでいたらなー」と深くため息をついた。


13歳になる我が子には、9歳ころまで毎晩本を読み聞かせた。だから、彼は「石臼」「馬洗い」「わらしべ」などというたいへん優雅な日本語のヴォキャブラリーをもっている。ただ、私の教育が至らず、日本語はだいたいわかるけれども話すことができないようになってしまった。そのため、私が日本語で話しても、彼はフランス語で返事をするというスタイルの会話が日常的だ。


そこで彼にわからない日本語の単語があると、会話が滞ったりすることもあるのだが、それでも、「怒られるときは日本語のほうがいい」と、彼は言う。


フランス語で怒り始めると、小さなことが大きなドラマに発展し、怒鳴ってしまうことが多いからだ。威勢が良い言葉や言い回しが多いので、悪態をついたり感情を露にするのにもってこいなのだ。


使う言語によって私たちの人格も変化してしまう、こんな発見もできた、楽しい校正だった。


(フランス・パリ在住 夏樹)