136号/凛 福子

アメリカに1年間高校留学していた長女が、つい数日前に帰国した。送り出すときは、戻ってくるのはだいぶ先だと思っていたのに、いざ帰ってきてみると本当にあっという間。空港で出迎えても、久々の再開というより、ちょっと長めの旅行に行っていたような感覚で、なんだか少し不思議な気分だった。


私が学生だった頃に留学していた友人の親は、よほどのことがなければ、当時は高価だった国際電話で話すことはめったになく、たまに届く手紙を待つしかなかった。逆に電話などかかってきたら、何事がおきたかと心配したことだろう。


友人に、娘が無事に戻ったと伝えると、「それは何より。留学でなにより大切なのは、語学を習得することでも、国際交流を図ることでもなく、無事に帰ってくること」だと。留学経験のある彼女の言葉には真実味があった。


しかしながら、今はチャットだの無料オンライン通話だのが自由にでき、ホストマザーからも、時折メールが届いたりして、あまり遠く離れているという実感はなかった。その良し悪しは何とも判断しづらいが、少なくともどうしているのかわからないという漠然とした不安がまったくといっていいほどなかったのは、親の精神衛生という意味ではマイナスではなかった。


それが影響したのかどうかはわからないが、娘は留学生にありがちな「倍ぐらいの大きさになって帰ってくる」というようなこともなく、見た目にはほとんど変わらないまま戻ってきた。彼女の中身がどう変わったかは、これからじっくり観察するとしよう。


(日本・東京在住 凛 福子)