第6回 ファンドレイジングはお金だけでなく、友情も生み出す

ニュージーランドでファンドレイジングに携わって10年にもなろうとしている。しょっちゅう活動をしているのでなくても、いったん関わったら、手間ひまがかかるもの。それでも、声がかかったり、自分で「やろう!」「やらねば!」と思った時は、忙しくても何とか時間を作って手伝う。私の背中を押すのは、一体何なのだろうか。そう、それはファンドレイジングが楽しいからなのだ。

数字でわく実感。集めたお金は地元へ

ファンドレイジングは活動の結果が、何となくわかるというものではなく、バッチリ数字で出る。数字は大きい方が良いけれど、そうでなくても、物理的に目に見える成果は、自分の貢献度がわかりやすく、うれしいものだ。

SPCAのためにカップケーキを売る2人。大好きな動物のために何かしたいという共通の思いで結ばれている

娘の修学旅行費は全額で375NZドル(約3万円)だったのだが、ファンドレイジングをした家庭は125NZドル(約1万円)に抑えることができた。ディスコを催したり、個人宅の庭の整備をしたり、チョコレートバーを売ったりした活動が全費用の3分の2を賄ったことになる。

ファンドレイジングイベントがあれば、娘と必ず参加するのが、動物保護団体のひとつ、SPCA。SPCAの代表的イベントは、「カップケーキ・デー」だ。個人、学校、店単位でケーキを焼き、売り出した利益が同団体の活動資金となる。去年の売り上げは、私が住むタラナキ地方北部全体で8,000NZドル(約65万円)を超えた。また別に行われた、街角に立っての募金活動では総額7,770NZドル(約63万円)が集まった。

集まったお金のトータルだけを聞くと、「たくさんのお金が集まって、よかったな」と漠然と思う。しかし、自分が担当した日や場所の売り上げを聞くと、もっと実感がわく。私たちが、カップケーキ・デーで売りに立った日には3,083NZドル(約25万円)を売り上げ、募金活動で立った場所では572NZドル(約5万円)を集めることができた。SPCAでは、各支部が主導して集められたお金はそのままそこで役立てられる。引き取り手が見つかるまで、馴染みのシェルターに仮住まいする犬や猫たちが、引き続き安心して暮らせる姿が想像でき、手伝ってよかったと思う。うれしい。

SPCAだけではない。ニュージーランドの慈善団体のほとんどが、お金は集めた場所で用いられる。ファンドレイジングが盛んなお国柄は、こんな仕組みにも支えられているのかもしれない。自分が住むコミュニティが豊かになるとわかれば、ファンドレイジングに携わる私たちも、より頑張ろうという気持ちになる。

募金する人、募金箱を持つ人。ゴールは一緒

ファンドレイジングを通して得られるのは、お金だけではない。仲間意識、友情、ほかでは得がたい経験、人との触れ合い……と、挙げれば切りがない。

修学旅行費のためのファンドレイジングをした際には、単なるクラスメートが、「同じ目標に向かって、一緒に努力した仲間」になった。以前は仲良しということもなかったのに、資金集めを機会に深く交流するようになったケースもある。

一般の慈善団体でのファンドレイジングの際は、見ず知らずの人と肩を並べて活動する点が、学校とは少し違うが、「同じ目標」をやり遂げようという連帯感は変わらない。街角で募金を呼びかける際はペアを組むが、相手は当日にならないとわからない。それでも、「困窮している人や動物を助けたい」という気持ちがある者同士、最初は知り合いでなくても、一瞬にして「相棒」になってしまう。

寄付をしてくれる人もゴールは同じだ。募金箱のそちら側とこちら側、心がピピッと通じる瞬間がある。お金を入れながら、こわもてのお兄さんが恥ずかしそうに見せる笑顔、愛想が悪そうだったおばさんが思いがけず話してくれるエピソード、小さな子が勇気をふり絞って箱にお金を入れてくれる姿などは、本当に心温まる。こんな風だから、ファンドレイジングはやめられないのだ!


クローディアー真理/プロフィール
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。雑誌、ウェブサイトを中心に、文化、子育て・教育、環境、ビジネスといった分野で執筆活動を行う。