237号/原田慶子

2017年のペルーを代表する話題といえば、なんといってもサッカー・ワールドカップの南米予選。36年ぶりの本戦出場とあって、ニュージーランドに勝利した日は国中が大騒ぎだった。あんなに一致団結したペルーを見たのは、私が移住して以来初めてだ。

「36年ぶりだなんて、ペルーって弱いんじゃない?」と思う人がいるかもしれないが、そうではない。とにかく南米諸国が強すぎるのだ。FIFAランキング2位のブラジルと4位のアルゼンチンを筆頭に、チリやコロンビア、パラグアイ、ウルグアイ、といった強豪がずらりと並ぶ中、たった4.5チーム分しかない出場枠を競い合うのだからそりゃペルーだって大変だろう。

加えて30年前に起こった「アリアンサ・リマの悲劇」と呼ばれるチャーター機墜落事故の後遺症もある。1987年12月8日にペルーの名門チーム、アリアンサ・リマの選手や監督を乗せたチャーター機がリマ沖に墜落、パイロットを除く乗客全員が死亡した。この事故で国の代表選手だけでなく、選手を育てるべき監督やトレーナーまで一度に失ってしまったペルーのサッカー界は、激しく打ちのめされた。当時のペルーの国情は、「ペルー移住物語」をお読みいただければおよそ想像がつくだろう。ペルー経済が立ち直り始めたのは2000年を過ぎてから。国が落ち着かねば、良い選手も育たない。

「でも、それから4回くらいはチャンスがあったんじゃない?」という突っ込みはご遠慮あれ。そういう話をすると、「だって南米リーグは強豪ぞろいなんだもん」という無限ループに突入するだけ。「FIFAランキングで言えば、ペルーはコロンビアより上だよね?」というのもなしだ。とにかく本戦に出場できるのだから、細かいことは忘れよう。

今月1日に行われた組み合わせ抽選で、ペルーはフランス、オーストラリア、デンマークと対戦することになった。これまたツワモノぞろいで腰が引けそうだが、夢を見るのが得意なペルー人のこと、少なくとも6月16日の初戦まではこの盛り上がりが続くはずである。あと半年以上もお祭り気分のままなんて、なんてラッキー!来年もいい年になりそうだ。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)