261号/原田慶子

2020年が幕を開けた。新年に相応しい後記をと思って書き始めたが、内容が気に入らず何度も自分でボツにしている。その理由は、何をどう書き出しても話が後ろ向きになってしまうからだ。

米軍のソレイマニ司令官殺害とイランによる在イラク米軍基地攻撃は、ウクライナ民間機の誤爆という大惨事を引き起こした。オーストラリアの森林火災はその勢いが衰えず、プエルトリコでは地震が頻発している。フィリピンのタール火山は人間社会を押し潰すかのように、大量の灰を地上に振りまいている。私個人が悩んでも仕方がないが、だからといって見ないふりなどできっこない。「なんなんだ、この1年の始まりは!」と天に向かって悪態をつくざまだ。

とはいえ生活レベルでは嬉しいこと、楽しいことはそれなりにある。周囲には目標に向かって頑張っている人もたくさんいて、そういう人たちからポジティブな刺激を受けてもいる。結局“自身の範囲”なんて限られているのだ。どんなに“外”が気になっても、自分にできることはせいぜい毎日を丁寧に生きていくことだけ。ネガティブな話題に加え、誤った情報もあふれる今だからこそ、その内容を短時間で精査し惑わされない力が必要だ。私にはなかなか高いハードルだが、今年はこれを目標にしようと思っている。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)