第4回 エクササイズライフが恋しいよ~

この連載を決めた昨年末ごろには1年分の概ねの構成を考えていた。第4回はエクササイズのことを書こうとメモしてあった。しかし、3月からコロナ禍で暮らす日々がはじまり、あらゆることが激変。準備した構成プランはみごとにみなボツだ。今となっては「ミシガンの風に吹かれて~悠々閑々編~」とつけてしまったタイトルにも、「なにが悠々閑々だよっ……」と嘆き、唸ってしまう。

わたしの住む米国ミシガン州では3月24日から自宅待機命令となった。6月から実質上の待機命令は解かれたものの、諸々のルールを守ったうえでの解除ということで未だ制約は大きい。州としての非常事態宣言は6月18日に7月16日まで延長すると発表されている。こもることに疲弊し、人々の気はかなりゆるみ出しているようだが、ウィルスが消滅したわけもなく、コロナパンデミックの中で生きる日々は今後もまだまだ続きそうな気配だ。ちなみに我が家はかなり真剣にコロナ罹患を恐れており、3月13日以降、食材もすべてオンラインショッピングの宅配を利用している。

先回書いたようにここ数年は、健康を意識した食生活を心がけてきた。そして、それと同じぐらいに運動することも大切にしてきた。10年ほど前とつぜん肘のあたりが痛み、1ガロン(3.78リットル)のミルクが持てなくなり、ジャムの瓶のふたを開けることもできなくて医者に駆け込んだ。上腕骨外側上顆炎と診断された。いわゆるテニス肘で、ドクターが言うには、詳しい原因はわからないが加齢による筋力の衰えや、過度な家事によっても発症するとのことだった。振り返れば当時は大家族の家事に加えて、家の改築工事のために連日ペンキ塗りや大工仕事の手伝いで大忙しだった。

せっかく医者に行ったのに治してくれるわけではなかった。「簡単には治りませんよ」と言われ、フィジカルセラピーに通うよう勧められた。しばらく通ったが、たしかに簡単には治らなかった。「痛みとつきあっていくしかないな」と思い直し、どうせ治らないならもっと自分の体を鍛えようと筋トレのためフィットネスジムに通い出した。

そんなしょぼいきっかけからの一念発起だったが、はじめてみると、新しい自分の時間ができ、好きな音楽をワイヤレスヘッドフォンで聴きながらワークアウトに集中することは、自分にとって落ち着く時間であり、瞑想の代わりにもなった。しばらくしたらテニス肘の痛みも消えていた。

何度かジムを変えたものの、わたしのエクササイズライフは10年余り続いている。いや、正確にはコロナ禍で今は通えなくなってしまったので「続いた」と言わなければならない。コロナ禍直前は有酸素運動としてダンスワークアウトに週3、4時間、さらにトレーナーが指導してくれる筋トレ系のグループワークアウトに週3、4時間と、週末以外はほぼ毎日、近所のフィットネスセンターで汗を流すことが日課だった。メンバーシップはシニア割引が適用されて月に28ドルと破格。数々のクラスの受講やトレーニングルームが使い放題という環境は、長い激寒のミシガンで心身の健康を保つためには、ありがたいことだった。

ダンスワークアウトで踊ることは何より楽しく、ストレス解消にはもってこいだった。踊って汗をかき、カロリー消費をする以上に、精神安定効果も絶大だ。トレーナーの指導の下、日常生活ではなかなか使わない筋肉を鍛えるクラスも、体の老化抑制を実感できた。はじめた当初に比べれば体重は7、8kg減り、明らかに余分な脂肪が落ち、服のサイズも変わった。加齢とともに心身の衰えを感じざるをえないなか、自分の意思で行動することにより、多少なりともなんらかの効果があると感じられる、ささやかな充実感を得られることはうれしかった。

だからこそ、体が動く限り続けようと決めていたのに、コロナが襲いかかり、描いていた日常は一変してしまった。同じレベルのことを自宅で自分だけですることはかなりハードルが高い。みんなで踊るから楽しいわけで、一人で踊るのもなんだかなーだし、ダンベルやバランスボールはうちにもあるが、だからといって孤独に体操するのも気が進まない。コロナ禍で暮らしていかなければならないのだから、より免疫力を向上させるためにもエクササイズが必要だと頭では理解しても、はてさて、これまでどおりの効果を持続させるには今後どのようにしていくべきかと現在、思案中である。

エクササイズに限らず、現時点の世界の様子から推察するに、もう以前のような暮らしに戻ることは期待できないだろう。あれも無理、これもできないとただ嘆いていても仕方がない。これまで、移住しながら生き抜いてきた経験を思えば、環境の変化に対する免疫や、新環境に適応する能力も培われていると、自分を信じたい。今後も、あらゆる動向を見極めながら、現状で実現できる「自分らしい暮らしぶり」を模索し実行に移していかなければと、ただいまそうとう考え中なのである。

椰子ノ木やほい/プロフィール
新たな生活スタイルへの個々の戸惑いだけでなく、経済的にも政治的にも世界は大混乱に陥っている。日米問わず、政治腐敗を極めた世の中では引き起こされる事件も悲惨で、ニュースを見るたび精神をまともに保つことすら難しいレベルだと感じている。そんな社会情勢に加え、我が家では追い打ちをかけられるような多事多難な日々。連載タイトルを“悠々閑々”とつけてしまったからには、何としてでもそっちの方向に着地させてみせると自分に気合を入れている。