第2回 オトコはいつまでも引きずる!?

先日、夫の友人S君と久しぶりに夕食を共にする機会があった。50代前半のメキシコ人だが、夫の幼なじみであり、つい最近80代のお父様を新型コロナ感染症で亡くしている。世界中で起こっているパンデミックにより大勢の尊い命が奪われているが、こうして身近でも悲劇が起こっていることに、胸が痛むのと同時に、お亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈りしたい。このような世情の中ではあるが、メキシコの恋愛事情をテーマにしてお届けすることをご了承頂けると幸いである。

さて、久しぶりの再会ではあったが、このS君もなかなか興味深い恋愛遍歴をもっている。

まず、メキシコの恋愛を語るうえで、メキシコが多民族国家であるということを伝えておこう。メキシコの人口は日本と同程度の約1億2千500万人。元々住んでいたアステカ族やマヤ族など約70の先住民部族 (末裔)が総人口の2割近くを占める。そして、「メスティソ」と呼ばれる先住民と白人、有色人種との混血の人口が約7割、残りの1割が純白人、いわゆる欧州系、主にスペインからの征服者の祖先を持つ者が多い。現在のメキシコ大統領は例外だが、メキシコでの経済支配層というのは、ほとんどがこの1割に属する人たちである。

1割の中でも、全てが欧州系というわけでもなく、ここにはユダヤ系の人々も含まれる。意外にもレバノンなどのアラブ諸国からの移民も財を成している人々が多い。クラス社会が根付いているメキシコでは、恋愛においても、この1割の人口の中で出会いを求めるため、この層の人たちが、どこかで繋がっていて、何らかの親戚関係があることは興味深い。また、その中でもアラブ系の人たちは、内輪で結婚することも多く、とても閉ざされた社会であることに驚かされた。

話はS君に戻るが、彼はバツイチで、前妻との間に成人とティーンの子どもが3人いる。子どもたちは普段は母親と暮らしているが、実父であるS君ともとても良好な関係にあるようだ。S君はいわゆる、スペイン人を祖先に持つ混じりっけない白人で、若い頃は、周りの女子が放っておかない超イケメンで、笑顔がとてもかわいかった。オッサンになった今でも、育ちの良さがにじみ出ていて、相変わらず笑顔はステキだし、男女問わず、誰からも好かれるタイプのイケてる中年オヤジなのである。

前妻のAさんは、現在50歳手前だが、アラブ系の超裕福な家庭で育ったためか、年齢を感じさせないほどおしゃれで魅力的な女性だ。私自身の経験も踏まえ、30年程前までは、2つの異なる人種のルーツを持つ男女の結婚は今ほど普通ではなく、両家ともに反対だったのである。カトリックを重んじるお国柄ゆえ、離婚も簡単には許されない時代の空気の中で、反対を押し切ってゴールインした。子宝にも恵まれ数年は幸せそうだったのだが案の定、習慣や考え方、意見の食い違いなどルーツが異なる結婚生活はなかなか厳しく、離婚という結末となった。現在に至っては、メキシコでもクラス社会も柔軟化し、離婚も多く、シングルマザーの割合も高まっているものの、当時はまだ離婚も簡単ではなかったことだろう。

Aさんと離婚後、S君は青春時代の記憶が蘇り、新しい彼女を作っては別れることを繰り返した。Aさんも、超イケメンのキューバ人やイタリア人と浮名を流し、奔放に恋愛を楽しんでいるようだが、2人とも一向に再婚の兆しはみられない。

しかし、ある日S君は、昔から心に秘めていた女性が離婚をしたことから、その彼女と付き合うことになった。その時は期待を込め夫と「再婚するかな~」と勝手に盛り上がったものだが、やはり、その彼女とも別れが来たようだった。

そして今回の久々の夕食の席で、お酒も進み恋愛話に花が咲いたところで意外な一言がS君の口から放たれた。

「いろんな人と付き合ったけど、やっぱりAさん以上のオンナには巡り会えないんだよな~」

この言葉を聞き「やっぱり、オトコはズルズルと後を引く」と私なりに確信した。

次回会うときは、「どんな女性を連れてくるのだろう?」とS君の今後にも興味津津なのである。

山本真希子/プロフィール
Makiko Yamamoto de Mier y Teran

1993年から在墨  メディアコーディネーター・ライター・通訳翻訳
メキシコに住み始め25年以上が経過、激しい気性の彼らが起こす恋愛事情は率直に言って『ビックリ』そして『面白い』『明るい』そんな彼らの日常にふれてみた。