第10回  サオメン -中国・新疆ウイグル自治区-

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日本では北から南まで米が主食。今は品種改良により北の地域でも米は作られているので意外に思われる方もおられるかもしれないが、もともと米は南方の植物。中国では稲作の北限より北にも広大な国土があり、北方は小麦粉文化圏。麺、饅頭、餃子、さらにシルクロードで知られる西北の地域では、日本人によく知られるインドのそれとは異なる、様々な種類のナンも広く人々に親しまれている。

この西北地域にあり、中国国内でもっとも広く、42の民族が暮らすのが新疆ウイグル自治区。その中でも多数を占めるウイグル族の人々の主食も、ナンや麺類。小麦粉に塩と水を加えて寝かせた生地で作られる麺でも、もっともよく食べられている手打ちの太麺は、日本のうどんとそっくり。しっかりとしたコシがあって、讃岐うどんに極めて近い食感だ。同じ生地で、きしめん風の幅広い麺や、細麺、餃子の皮なども作られる。

今回、紹介するサオメンに使われるのは、短く切った麺。うどんを1cmくらいに小さく刻んだようなタイプが多いが、作る人によってまちまちで、マカロニほどの長さのものや、小さく手でちぎったもの、やや平たいきしめんのような麺を切ったものもある。

この麺を細切れの羊肉と野菜といっしょに炒めたのがサオメン。首府のウルムチには今は多くの漢族の人々も暮らしているため、普通語(中国の標準語)のメニューを置いている店もあり、その場合は炒面(チャオミェン・中国語簡体字)と表記される。また、細かく切ってあることからサイコロを意味する丁丁面(ディンディンミェン・同上)と呼ばれることも。

使われる野菜は家庭料理では身近なもののありあわせで厳密な決まりはないが、必ず入るのはトマト、タマネギ、ニンニク、そして唐辛子。ここにピーマンやインゲン、スパイス類が入っている場合が多い。味わいと食感は、たとえればトマト味の焼きうどんといったところ。私自身がもっちりした歯ごたえが好みということもあり、病みつきになるおいしさで、滞在中に何度か食べた挙句、日本に帰ってから、なんと麺から手作りで再現してみたほど。

シンプルな料理なので、失敗もなく最初からおいしくできたが、小さな麺をいちから作るのはいささか大変だった。食べ終えてから、讃岐うどんを刻めばよかったのではないかと気づいたが時すでに遅し……。みなさんにはぜひ、まずはお手軽讃岐うどんバージョンで試してみることをオススメしたい。

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。正月気分のすっかり抜けた日本ですが、アジアの国々ではこれから新しい年の訪れを祝うのですね。占いでは、今年は転機の年だそうで……。よい意味であることを祈りつつ、がんばります。新しい年がみなさまにとって素晴らしい1年になりますように!