第3回中国の空の旅にくたびれる 雲南省・麗江からシャングリラへその1

雲南省へは中国にいる間に一度は行ってみたいと思っていた。雲南省は中国南西部に位置し、南部はミャンマーやラオス、ベトナムと国境を接し、東南アジアのような亜熱帯地域がある一方、3000メートル以上の高地もあり、各地にはいろん...
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雲南省へは中国にいる間に一度は行ってみたいと思っていた。雲南省は中国南西部に位置し、南部はミャンマーやラオス、ベトナムと国境を接し、東南アジアのような亜熱帯地域がある一方、3000メートル以上の高地もあり、各地にはいろんな少数民族が住んでいる。

雲南省各地で撮影されたチャン・イーモウ監督、高倉健主演の映画、「単騎、千里を走る」を観て、ますますその風景に触れたくなってしまった。今回は混雑する中国の連休を避けて、夏休みの旅行として雲南省へ行くことにした。

雲南省と周辺の地図

雲南省と周辺の地図

家族会議により行き先は北部の麗江とシャングリラ(香格里拉)に決定! 麗江からシャングリラへ行くには車が必要なのでツアーがあるとありがたいところだが、麗江とシャングリラの両方に行くツアーが見当たらない。そこで、いつも利用する旅行代理店の日本語も話す徐さんに相談に行った。徐さんは、経由地の昆明まで行くツアープランを利用して、その先を自分流にカスタマイズするという融通のきいた方法を提案してくれた。中国の国内旅行は移動距離が長く、当時はまだ飛行機は庶民にとって高嶺の花の運賃で、経由地まででも団体料金が適用されるツアーを利用した方が安く上がるのだ。

こちらの希望を伝えて徐さんと一緒にプランをつくる。結局、雲南省の省都である昆明を経由して麗江まで飛行機で行き、麗江ではガイドを付けずに自由行動、麗江からシャングリラへ向かう時からガイドとドライバー、そして車を用意してもらい、麗江のシンボルである玉龍雪山や、石鼓鎮という小さな村を回ってシャングリラへ行く4泊5日の我が家だけの旅行プランが完成した!

そして迎えた出発の日。朝早くから空港へ行き、麗江へ向かうべくチェックインすると、経由地の昆明までの搭乗券だけを渡された。北京 – 昆明間も昆明 – 麗江間も同じ航空会社なのに、いったん昆明で荷物を受け取って、再チェックインしろというのだ。「こんなことあり得ない」と食い下がったが、中国内陸部の空港事情などよくわかっていない私たち。麗江までゴリ押しで荷物を預けて、ロストバゲージになっても困る。やむを得ず昆明行きの搭乗券を受け取ることにした。

気をとり直して搭乗券にある47番ゲートへ向かった。この頃の北京首都空港はまだ第3ターミナルはなく、第2ターミナルは一般的な空港のように中央部から左右にゲートが広がり、ターミナルを歩いて行く。47番ゲートは向かって左側の一番奥で、そこからバスに乗りタラップで搭乗するのだ。つまりバスに乗り遅れることが、飛行機への乗り遅れを意味する。ゲートへ行く途中モニターを見て47番ゲートと確認。一番奥まで行くとゲート5か所分のバス乗り場があった。そこにいた客の多くは47番ゲートの客だが、行き先は西安行きで、私たちももう少しでバスに乗ってしまうところだった。

不安に思い案内モニターを見ると、昆明行きは23番ゲートに変わっていた。ゲートが変わるのはよくあることで、気づくのが遅すぎてフライトに間に合わなかった人も結構いるらしい。

とにかく急いで23番ゲートへ行かねばならないが、この23番ゲートが遠い! 左端から中央まで戻って今度は右側の奥の方まで行くのだから、北京首都空港の国内線ターミナルをぐるりと散歩したようなものだ。途中案内モニターの前を通ったので、念のため確認したら、今度は48番ゲートに変更! 初めの47番ゲートと同じ場所に戻る!? さっきの23番ゲートという情報は何だったのだろう? 腑に落ちないが大急ぎで48番ゲートを目指して小走りで戻ると、もう喉はカラカラ、肩で息をしてヨレヨレになってしまった。しかしゲートにはまだ”昆明行き”の表示もなかった。結局30分遅れで48番ゲートから北京を出発して事なきを得た。

やっと搭乗できた!

やっと搭乗できた!

本当に“事なき”か 、いや、そうなると昆明での乗り継ぎ時間は1時間しかない。タイムレースのように昆明でいったん荷物を受け取り、チェックインカウンターで行列に並んで搭乗券を受け取ってゲートまでダッシュ! しかしゲートに着いてみれば、まだ搭乗の行列がなくて拍子抜けしてしまった。

普段はゆったり構えている中国人だが、飛行機ではとかくセッカチで、早く乗り、早く降りたいが基本。荷物を預けると、受け取るのに時間がかかることを嫌がり、よほど大きな荷物でない限り預けようとしない。だから座席上の荷物入れは自分のスペースの奪い合いとなり、搭乗が始まる気配を感じるとゲートの前に長蛇の行列ができる。私たちがゲートに着いたときにはまだその行列がなかった。

飛行機が大好きな息子は、窓に張り付いて自分が乗る飛行機を眺めていた。すると突然「どうして僕のお荷物載せてくれないの? どうして! 」と興奮気味に私の方に走ってきた。窓の外を見ると、いったん飛行機に積み込んだ荷物を外に出す作業をしている。息子のスーツケースは派手な緑色だったので、自分のものが出てきたことに気づいたのだ。しばらくするとアナウンスがあり、予定していた機材に問題が見つかったのですぐに別の機材を用意するが、出発が遅れるということだった。

中国の国内線の旅はくたびれるけれども、傍観者としてはマンガのように奇抜でおかしいこともある。搭乗口では規定サイズを大きく超えたスーツケースを機内に持ち込もうとして、空港職員とケンカになったり、機内に乗り込むと荷物入れをめぐってあちらこちらで大声が飛ぶ。またトイレに15分以上こもっていた客が、注意をした客室乗務員に食ってかかる等々。1日2便乗るだけでもこれだけ激しい人々に遭遇するのだ。定時出発の難しさも少しは理解できてしまった。

雲南省・麗江からシャングリラへ 続く

林 秀代(はやし ひでよ)/プロフィール
2005年から2008年まで中国・北京在住。現在神戸在住。フリーライター。北京滞在時より中国の生活や育児、北京の街や中国の旅を題材にしたエッセイや記事を書いている。帰国後は神戸の華僑からの聞き書きも始めている。‘99年生まれの男児の母。