第11回 魯肉飯(滷肉飯)・ロウバープン-台湾-

 

台湾で庶民の味として広く愛されているこの料理、簡単に説明すれば、家庭や食堂、屋台などで食べられる「煮込み豚肉ぶっかけ丼」。だが、その味わいを紹介する前にその名前の説明から始めなくてはならない。

というのも、タイト...
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台湾で庶民の味として広く愛されているこの料理、簡単に説明すれば、家庭や食堂、屋台などで食べられる「煮込み豚肉ぶっかけ丼」。だが、その味わいを紹介する前にその名前の説明から始めなくてはならない。

というのも、タイトルに2種類の漢字を記した通り、台湾でも店によって料理名の表記がまちまちで、これについて論議が巻起こっているから。料理名は本来「滷肉飯」であったが、いつしか発音が同じ「魯肉飯」の字が当てられるようになり、今やそちらのほうが主流となってしまった。日本で発行されているガイドブックや雑誌の記事などでも「魯肉飯・ルウロウファン」(ルウロウファンという読みは中国の普通語(標準語)によるもので、台湾語ではロウバープンと発音される)とされているものがほとんどだ。

論議の発端は、2011年3月に発行された台湾版ミシュランの中で、中国本土の山東省を起源とする料理だと紹介されたこと。これは大いなる誤解だと台北市長が抗議。ミシュラン側が訂正するという一悶着があり8月末頃に台湾のメディアを賑わした。中国料理の中で「魯菜」といえば、山東料理を指すことがこの誤解の原因と推測され、本来の表記に戻そうという動きが出てきたようだ。

さて、本題の料理の説明に話しを戻そう。この料理は台湾の人にとってのソウルフードと言えるもので、そのレシピは家庭や店によってさまざま。ふたつとして同じものはないとされるが、共通点は細切れの豚肉を酒、砂糖、醤油で甘辛く煮込んだ具を白いご飯に汁ごとかけたものであるということ。肉の部位、切り方をはじめ、タケノコやシイタケを加えるかどうか、味付けのポイントに五香粉、唐辛子、胡椒などを入れるか入れないか、などの違いが豊かなバリエーションを生みだす。

個人的にはシイタケ入りの、あまり脂っこくない甘めの味付けに胡椒が少々きいたものが好み。日本の高菜漬けによく似た、梅干菜と呼ばれるからし菜の一種の漬物が添えられることが多く、これもまた相性抜群。絶好のアクセントとして味を引き立てる。そしてもちろん、つゆだくがキホン!! 行儀はさておき、器からガシガシかっこむのがおいしく食べるコツである。

台湾では、町中の食堂や屋台でたいていメニューにある料理。小腹が空いたときの軽食、あるいはサイドメニューとして親しまれていて、丼というより大きめのご飯茶碗くらいの器に盛られたものが多いので、散策の合間に食べ比べもまた楽しい。台湾を旅する機会があれば、ぜひ好みの一杯を探求してほしい。

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。気温差が激しく、暑いときはぐったりの酷暑だった東京も、ようやく秋の気配。先日は久々の京都旅行で朝から晩まで食べまくりの数日を過ごし大満足……いや、しかし、その分しばらくは自重しなきゃと反省中。