第8回「台湾の未来は!?」反原発デモと国政選挙/台湾

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福島の原発事故以降、台湾では毎月のように、反原発のデモが起きている。

なかでも大きかったのは4月30日、台湾の4都市であった1万人以上のデモ。私の住む台湾南部、高雄市の公園のデモが行われていたが、屋台が出て、子どもからお年寄りまで集う、まるで楽しい夏祭りのような賑わいだった。

大型トラックの荷台につくられたステージでは、被り物をしたダンサーたちが踊り、若者たちはコスプレで反核をアピール。台湾の人々は、選挙活動でさえも、このように楽しいイベントにしてしまう明るさがある。

さて、台湾は、北部の最北部、新北市に第一、第二原発、最南端の屏東県に第三原発があり、現在、新北市の第四原発を建設中だ。原発の割合は、全電力の20%ほど。反原発派の理由はいろいろあるが、いちばん大きな理由はこれ。

「原発事故が起きたら、台湾人は逃げる場所がない」

台湾は地震地帯に位置しており、人口が多く、面積はそれほど大きくない島だ(九州よりやや小さい面積)。特に、老朽化しつつある第一、第ニ原発の30キロ圏内には、人口の密集する政治・経済の中枢、台北市がある。しかも台湾は現在、原発を保有しながら、中国の反対から、IAEA非加盟の唯一の地域。

国民党の馬英九総統は、いま稼働している原発は40年の期限で廃炉にし、2011年を目指していた第四原発の運転開始も、1年先送りにすると発表したが、6月、第四原発への追加予算は、国会であっさり可決されてしまった。

来年1月には、総統と国会のダブル選挙がある。原発に反対してきた、対する民進党の蔡英文氏は、2025年までの原発全廃を掲げているが、やはり最大の争点は、台中関係のようだ。これまでも台湾は、政権が変わるたびに、さまざまな政策が中断、変更されてきた。

「政権が変われば、どうなるかわからない」

そんな気持ちが、台湾人を熱くする一方、一部では冷めた空気も生み出しているように感じる。

有川真由美/プロフィール
2009年より台湾在住。本を執筆しながら、高雄第一科技大学大学院で日本社会を研究中。著作は『あたりまえだけどなかなかわからない働く女のルール』(明日香出版社)、『仕事ができて、なぜか運もいい人の習慣』(PHP研究所)など。10月に『おもしろいように!幸運に愛されるおしごと手帳』(河出書房新書)、『感情の整理ができる女は、うまくいく』(PHP研究所)が発売予定。ブログ「MAYUMIの旅びと生活」発信中。