2 ドイツで、外国人として暮らすこと/ドイツ

90年代、ドイツでは移民の子どもはおおっぴらに外国人扱いされていたように思う。ハノーファー大学でギリシアからの移民2世の友人が「いつ母国に帰るんだと、よくきかれる」と憤慨していた。彼はドイツ生まれで、ギリシアには数回しか...
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モスクの帰りに

モスクの帰りに

90年代、ドイツでは移民の子どもはおおっぴらに外国人扱いされていたように思う。ハノーファー大学でギリシアからの移民2世の友人が「いつ母国に帰るんだと、よくきかれる」と憤慨していた。彼はドイツ生まれで、ギリシアには数回しか行ったことがない。ギリシア語よりドイツ語の方が上手だし、国籍がギリシアというだけ。それなのに名前や姿から、どこにいっても外国人扱いされる。

ドイツの人口は約8200万人。うち外国人は8%ほどだが、帰化している人を含めると外国出身者は2割近い。イスラム圏からが約400万人で、そのうちトルコ系は3分の2を占める。ドイツは1955年以降、イタリアやスペイン、ギリシアなどからガストアルバイター(出稼ぎ労働者)を受け入れてきた。最初のトルコ人労働者がやってきたのは50年前だ。1973年のオイルショックにより受け入れ中止となったが、その後も家族を呼び寄せることはできたから移民は増え続けた。

祖国にいずれ戻ると思われた移民は、ドイツに定住。ドイツ政府は2000年、外国人を正式に社会の一員と認め、移民統合に力を入れ始めた。「移民の背景を持った人」を支援しようと、語学教室や講座などさまざまなプログラムを実施。日本人の私も「移民の背景を持った人」であり、ドイツ人の父親を持つ私の息子もそうだ。

移民は交じり合うのではなく、混ぜても個々が独立しているサラダボウルではなく、ドイツに「統合」させるのがいい、とドイツは考えている。だから外国人はドイツ語を学び、ドイツ社会や法律の知識試験に合格しなければならない。しかしいったんドイツ人になれば、社会保障は充実しているから暮らしやすい。健康保険に入れない人がいるアメリカより、全員加入が義務づけられているドイツの方が安心して生活できるように思う。

最近、容姿や名前でドイツ人か否かを決め付けるようなことは、だいぶ減ってきたように感じる。外国人がドイツに慣れるように、ドイツもやっと外国人に慣れてきたらしい。

田口理穂/プロフィール
15年ドイツに住んでいると、ときどき初対面のドイツ人から「ドイツ語上手ねー」とほめられます。日ごろ自分は外国人だと意識せずに生活しているので、そういわれると、ドイツ人にとって自分はずっと外国人なのだとはたと思い知らされます。地球の歩き方のハノーファー特派員をしています。