第12回(最終回):こんぺいとう -日本- 

きらきらと小さなの星のように輝く甘いお菓子、こんぺいとう。ひらがなで書くのと、漢字で書く「金平糖」とではずいぶん印象が違い、私の個人的なイメージとしては、ひらがなのほうがしっくりくる。

しかし漢字もまた、縁起のよさそう...
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きらきらと小さなの星のように輝く甘いお菓子、こんぺいとう。ひらがなで書くのと、漢字で書く「金平糖」とではずいぶん印象が違い、私の個人的なイメージとしては、ひらがなのほうがしっくりくる。

しかし漢字もまた、縁起のよさそうな、そして「糖」という字がその体を表す、なかなかの当て字だと思う。というのも、こんぺいとうは遠い昔、ポルトガルから海をわたって伝えられた南蛮渡来のお菓子で、元は外来語。語源はポルトガル語で砂糖菓子を意味するconfeitos(コンフェイトス)だから。この語は、英語でお菓子を意味するconfectionary(コンフェクショナリー)の語源でもあり、こんぺいとうはまさに日本の西洋菓子の礎といえよう。

こんぺいとうを日本にもたらしたのは、1593年に来日し、布教活動を行なっていたポルトガルの宣教師ロイス・フロイス。1596年に織田信長に謁見した際に、ギヤマン(ガラス)の器に入ったこんぺいとうを献上したといわれている。当時、極めて貴重であった砂糖のみで作られたお菓子はさぞ価値のある贈り物だったことだろう。今も、皇室の慶事の引き出物として、ボンボニエールと呼ばれる菓子器にこんぺいとうを入れたものが用いられている。

伝来した当初は、その製法がわからず、何年もの月日をかけて研究が重ねられた。ようやく完成した日本で最初のこんぺいとうは、長崎で作られたといわれている。こんぺいとうは、回転する大釜に核となるケシの実を入れ、これに砂糖と水で作られた蜜をかけ加熱によって蜜が乾いたら、また蜜をかけるという地道な作業の繰り返しによって生まれる。気温や湿度とのバランスを見ながら、なんと1~2週間という長い時間をかけて作られると知って、正直なところ驚いた。

核には、かつてはケシの実のほか、ゴマなどが用いられたが、今はもち米をくだいたイラ粉とよばれるもの、あるいはザラメ糖などが用いられることが多いらしい。しかし、こんぺいとうならではの、あの小さなツノがなぜできるか……については、今もなお解明されておらず、研究が続けられているという。

ほんの小さなお菓子だけれど、これほどの歴史と価値を持つこんぺいとうは、その愛らしく夢のある色と形で、今も日本人に愛されている。長い旅を経て、日本人に遠い異国のお菓子を食べる喜びをもたらしたこんぺいとうは、世界各地の味を紹介する連載の締めくくりの「味」としてふさわしい逸品だろう。

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。2年以上にわたるこの連載は今回で最後です。これまで、お読みいただきありがとうございました。年が変わってからは、また新たな連載を企画しております。引き続き、お楽しみいただけるよう……食べ歩きます!