第2回  トライアウト制2 低年齢化

前回、米国では中高生が課外活動として集団スポーツのチームに入るときは、トライアウト(入団テスト)を受けて、チームの一員となるのが一般的であるとレポートした。

実際には、トライアウトは中高生だけでなく、多くの集団スポーツ...
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前回、米国では中高生が課外活動として集団スポーツのチームに入るときは、トライアウト(入団テスト)を受けて、チームの一員となるのが一般的であるとレポートした。

実際には、トライアウトは中高生だけでなく、多くの集団スポーツで小学校低学年から実施されている。シーズンごとにトライアウトをし、競技力や身体能力の高い子どもを集めトラベルチーム(競技チーム)を編成する。各地区のトラベルチームばかりを集めたリーグで、優れている子どもどうしを競わせる。

このように書くと、いかにも英才教育的なイメージだが、実際の全体練習は週に3日程度で練習時間もそれほど長くはない。そのためか、複数のスポーツ種目を掛け持ちしている子どもが多い。

トラベルチームを好まない子ども、または、トライアウトに落ちた子どもには「ハウスチーム」などと称されるレクリエーション色が強いチームでプレーできる仕組みになっている。

スポーツでは同じような力の対戦相手と競うほうが、一方的な試合展開にならず、ゲームそのものをより楽しめる一面があるので、似たような能力の子どもどうしで試合を行うことは悪いことではない。

しかし、シーズンごとに行われるトライアウトに、重圧を感じる子どもとその保護者は少なくないようだ。

チームの全体練習時間は少なくとも、トライアウトにパスしてチームの一員になるために、民間主催のプライベートレッスンや、長期休暇を利用した各種スポーツキャンプなどに参加する。筆者の子どもも、夏休みに民間のアイスホッケー練習に参加したことがあり、3時間×5日間で合計250ドルを支払った。費用もかかる。

「テスト」のあるところ、どこにでも「テストに備えるトレーニング」の需要が発生するのかもしれない。

私には、米国の子どもを対象としたスポーツレッスン市場が、日本の子どもたちの塾通いともだぶってみえるのである。

谷口輝世子/プロフィール
2011年11月『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)を出版。デイリースポーツ社でプロ野球、大リーグを担当。2001年よりフリーランスライターに。『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)、『スポーツファンの社会学』(分担執筆・世界思想社)