168号/凛 福子

日本を……いや世界を、文字通り「揺るがせた」東日本大震災から一年が経った。
ちょうどこの3月に日本にいる私が編集後記を担当するチャンスが巡ってきた! と張り切ったものの、しょっぱなからつまずいた。いろいろな考えが浮かんで...
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日本を……いや世界を、文字通り「揺るがせた」東日本大震災から一年が経った。

ちょうどこの3月に日本にいる私が編集後記を担当するチャンスが巡ってきた! と張り切ったものの、しょっぱなからつまずいた。いろいろな考えが浮かんでは消え、何度書きなおしても、どうにもこうにもまとまらない。この仕事を生業にして、そう短くもない近年、ここまで原稿が書き上がらないなんて、まずないこと。ひとしきり悪あがきして、気がついた。

私の中でまだ何も消化されていないことに。

どの考えも、ある面から見ればまっとうで、別の面から見れば疑問符がつく。だが、留まることなく流れていく時間を生きていく中で、誰もが毎秒、毎分、毎時、毎日……小さな選択と決定を積み重ねながら、歩み続けなければならない。

そして、それは災害があってもなくても変わらない事実。

国や政府や企業は別として、あくまでも個々人のことに限って言えば、それぞれが置かれた状況、立場ごとに、今までどおり小さな選択と決定を繰り返しながらしっかりと生きていくことこそ大切なのだ。そして、それぞれの選択や決定について、違う状況や立場にいる人が正しいとか間違っているとか意見することではない。

世界中のどこにいても、みな、この惨事に深く傷つき、その傷はまだ癒えていない。

たくさんの時間と、多くの人の努力と思いやりが積み重なり、さまざまなことがきちんと消化されて自然に還るまで、お互いがお互いをあたたかく見守り、手を差し伸べ、助けあって歩んでゆけることを祈ってやまない。

(日本・東京在住 凛 福子)