第5回 湯圓・タンユェン-中国-

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湯圓・タンユェン-中国-

日本では、ニュースなどで「暦の上では今日が……」というセリフを耳にするのみだが、中国をはじめとしたアジア諸国では、年中行事は今もなおこの旧暦(陰暦、農暦などともいう)に基づいて行われる。中でも最も重要な行事のひとつ、一年の始まりである正月も、もちろん旧暦ベース。つまり、世界標準でいうところのカレンダー上では、毎年正月の日が異なるということになる。

今年の旧暦の正月は、去る2月14日だった。家族で過ごす大切な日である正月とバレンタインデーが重なって、中国の若ものの悩みのタネだ、などというウワサもちらほら。ともあれ、やっぱり多くの人々が家族とともに、春節と呼ばれる中国のお正月を迎えるようだ。そしてこの春節はなんと2週間たっぷりある。

その春節の最後の日にあたるのが、元宵節。陰暦ベースなので、もちろんよりどころは月。元宵節は新月である元旦から数えて15日目なので年の最初の満月にあたる。その満月の夜に、家族揃って家庭円満を願っていただくのが、丸いお団子を食べるというのが昔からの習わしだ。

そのお団子が、湯圓(タンユェン=中国語の標準語である普通語)と呼ばれる、白玉のようなお団子。小豆やゴマ、ピーナッツなど、いろいろな餡が入った大きめのもので、ほんのり甘いシロップというか、スープに入っている。

この湯圓はおもに南方のもので、広東語ではトーンユンと読み、同じ読みで湯丸と書くこともあるようだ。こちらは、生地をつくって餡を包むという作り方。北方では餡のまわりに粉をまぶすという作り方で、湯圓ではなく元宵と呼ばれる。

北京の友達からもらった「もうすぐお団子を食べて、お正月は終わり」というメールはこの元宵のこと、「毎年、いろんな種類が出るのが楽しみ。今年は低糖、キシリトール入りにしてみようかな」という上海の友人からのメールは湯圓のこと、なのかな。

横浜の中華街に行けば、出来上がった冷凍の湯圓が買えるけれど、私は東京で、こし餡に練りゴマを混ぜたものを白玉粉で作った生地で包んで作ってみた。元宵節より一足お先にお味見。うん、お手軽に作ったわりにはなかなか。お汁粉よりもさっぱりして、たくさん食べられるのもうれしい。

今年も世界が円満ないい年になりますように!

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。今年の日本のお正月はどっぷり仕事だったので、お正月気分は旧正月で味わうことに。さて、新しい年は、どこで、どんな、おいしいものに出会えるかな?