第4回 夏休みがやってきた!

日本より一足先にこちらは夏休みに突入しました。6月中は長男も長女も試験やさまざまなイベントに追われ、彼らなりに忙しい日々を過ごしたので、ゆっくりのんびりできる毎日を心から楽しんでいる様子です。でも、私には例年通り悩みの種...
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日本より一足先にこちらは夏休みに突入しました。6月中は長男も長女も試験やさまざまなイベントに追われ、彼らなりに忙しい日々を過ごしたので、ゆっくりのんびりできる毎日を心から楽しんでいる様子です。でも、私には例年通り悩みの種がふたつ…。

ひとつ目の難題は、ドイツ各地にちらばっている親戚と一緒に過ごす予定をたてることです。ドイツの夏休み期間は州によってずいぶん違うため、お互いの休暇にぴったり合うようなプランを立てるのが実はとても難しいのです。ちなみに、今年の夏休みを見ても、私たちの住むシュレースヴィッヒ=ホルシュタイン州は6月25日~8月4日、デュッセルドルフのあるノルトライン=ヴェストファーレン州は7月9日~8月21日、ミュンヘンのあるバイエルン州は8月1日~9月12日といった具合です。州ごとに期間をずらしているのは、休暇中の移動による交通渋滞の緩和とか観光地の需要を集中させないためなどいろいろな理由があります。しかし、いとこたちがドイツ南部のバイエルン州から、私たちの住む北部にせっかく遠路はるばる訪ねてきてくれても、こちらはすでに学校が始まっているので、週末しか時間がとれず、一緒に旅行に行ったりキャンプを楽しんだりということがなかなかできません。それに、夏休みをまだ満喫している子どもたちと、夏休みがもう終わってしまった子どもたちとでは、テンションの高さが違い、どうもうまくかみ合わない気もします。親戚同士でいろいろ話し合った結果、今年はノルトライン=ヴェストファーレン州から来るいとこたちと一週間過ごし、バイエルンのいとこたちは、デンマークへ向かう途中の休憩所として我が家で数時間を過ごすことでなんとか落ち着きました。

さて、ふたつ目は、どちらかと言えば悩みというより、家庭内の運営手腕の見せ所というところでしょうか。子どもたちの夏休みの過ごし方について考えなければならないのです。なぜなら、6週間という長期間にもかかわらず、学校からは宿題や課題がまったく出ず、今まで午後の活動の中心になっていた地域のスポーツクラブやお稽古事などもすべて休みになってしまうからなのです。ドイツの田舎では補習塾はあるものの、もともと学校以外で学ぶことが定着していないので「夏期講習」など、もちろんありません。子どもたちはあらゆるプレッシャーから解放され、思う存分夏休みを楽しめるかのように思われるかもしれませんが、現実はなかなかそうもいきません。休暇が比較的長くとれるドイツ人たちは、2週間~3週間旅行に出てしまうことも多いので、友達と遊びたくても予定がうまく合わず、かといって親が毎日エンターテイメントを用意してやるというのも無理な話です。その結果、夏休みに入ったとたん、子どもたちはまるでスイッチの切れたロボットのように「ぽや~ん」と過ごしていることにもなりかねません。

特別に教育熱心な親でもない私は、子どもが休み中に勉強しなくてもあまり心配はしませんが「つまらな~い!」なんていいながら、ごろごろし、挙句の果てにはちょっかいを出して兄妹けんかに発展……などというのを見ると、やっぱり気になります。6週間の夏休みのうち、家族で旅行に出る2週間半、そして来客のある1週間を差し引いた残りの2週間半を「いかに有意義にすごさせるか」には、ない知恵をしぼるわけです。

同じようなことは他の親たちも考えているらしく、強力な助っ人もいます。地域の学童保育が夏休みはじめの3週間、通常の学校と同じ時間帯に子どもたちを預かり、グループ活動を主催してくれるほか、教会や地域の子どもクラブなども、一週間程度のキャンプや合宿を良心的な値段で行ってくれます。共働きの家庭はもちろんのこと、そうでない家庭でも利用することが多いのです。

さて、私の解決策ですが、来客などの予定が点在し、カレンダーが「まだら状態」なので、学童保育やキャンプという手が今年は使えません。そこで思い浮かんだのが、子どもの頃夏休みの初めに作った生活時間割です。目新しさが興味を引いたのか、長男(5年生)と長女(2年生)は私が印刷した24時間目盛りつきの円形の時間割に思い思いに予定を書き込み色分けし、自慢げに部屋の壁にピン留めして、1週間目はほぼ計画通り「規則正しく」過ごしました。親が何も言わないと、けっこう自発的に「(マンガじゃなくて)本を読む」とか「最低30分汗をかくくらいスポーツする」「夕ご飯の手伝い」などと書いていて、子どものまじめな面も見えてきたりします。気を良くした私は「日本には、このほかにも絵日記や観察日記、読書感想文、自由研究なんてアイデアもあるよ」と日本式夏休みの過ごし方導入を推し進めようかと息巻いていましたが、夫に「ぼけ~っとしているように見えるときこそ、子どもたちは人生について考えているのかもしれないぞ」と言われ、放っておいてあげるのも親心かなぁ、と考え直したのでした。

たきゆき /プロフィール
レポート・翻訳・日本語教育を行う。1999年よりドイツ在住。ドイツの社会面から教育・食文化までレポート。ドイツ人の夫、11歳の長男、8歳の長女、6歳の次女とともにドイツ北部キール近郊の村に住む。夏の間の天気を予測するのにもっとも重要な日「7 Schläfer (7 sleepers、6月27日)」は、今年も残念ながら雨混じりの不安定な天気。昨年に引き続き、今年も本格的な夏が訪れないのか?庭に仮設プールを組み立てる日を、首を長くして待っている子どもたちのことを思うと、悩みの種がまたひとつ増えそう……。