第12回 ヨーロッパ中のサポーターから元気をもらった1ヶ月

ポーランド・ウクライナ共催で行われたEURO2012(サッカー欧州選手権)が7月1日、幕を閉じた。ポーランドで共催されることが決まってから5年、スタジアムの設立が間に合わない、駅の改修が終わらない、交通整備がまだだ、ボラ...
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ポーランド・ウクライナ共催で行われたEURO2012(サッカー欧州選手権)が7月1日、幕を閉じた。ポーランドで共催されることが決まってから5年、スタジアムの設立が間に合わない、駅の改修が終わらない、交通整備がまだだ、ボランティアの準備は大丈夫か、とあんなに大騒ぎしていたのに、終わってしまうとあっけないものだ。

アイルランド・クロアチアサポーター友好の証

アイルランド・クロアチアサポーター友好の証

ポーランドで開催地に選ばれたのは、ワルシャワ、ヴロツワフ、ポズナン、グダンスクの4都市だった。私はスタジアムに足を運ぶことはできなかったものの、引越しの関係で、幸運にもそのうちの2都市、ポズナンとグダンスクに住むという機会に恵まれた。EUROの興奮を肌で感じ取ることができたその1ヶ月の町の様子をお届けしたい。

EURO2012は6月8日にワルシャワで開幕した。なんという偶然か、ポズナンとグダンスクは同じC組の開催地で、初戦は10日に行われた。

旧市庁舎の仕掛け時計。対戦国の旗をまとったヤギも、この日ばかりは勇ましく角を突き合わせる

その日ポズナンにいた私は、町の様子を見に行くことに。中心部である旧市街へ近づくにつれ、次第に増えるアイルランド・クロアチアサポーター。旧市場広場はアイルランド人とクロアチア人であふれ、広場中央では、クロアチア応援歌が流れる中、集まったサポーターによって大きなクロアチアの国旗が広げられていた。ポズナンの名物、正午にヤギが角を突き合わせる旧市庁舎の仕掛け時計からは、ヤギがアイルランドとクロアチアの国旗をまとって登場! 盛り上がりが最高潮に達したのだった。

2戦目は14日。その前日ポズナンからグダンスクに向かう列車に乗り込んだ私は、同じくグダンスクへ移動するアイルランドサポーターグループと乗り合わせることになった。初戦は負けてしまったものの、アイルランド人は陽気で、4時間の長旅の間も、列車全体から歌声や笑い声が響きわたっていた。試合当日、グダンスクの中心地へ行ってみると、今度はアイルランド・スペインサポーターをあちこちで見かけた。トラム(市電)やバスの窓から国旗をなびかせている人も! アイルランド人の中には、ポズナンですれ違った人もいるかもしれないと思うと、なんだか親しみさえ感じてしまった。

雨のグダンスクで準決勝のギリシャ対ドイツ戦が行われた翌日の23日、からっと晴れた旧市街は前日快勝したドイツのサポーターでにぎわっていた。あちこちからドイツ語が聞こえ、まるでドイツにいるような錯覚を覚えるほどだった。

アイルランド国旗をなびかせて走るトラム(市電)

そして迎えた7月1日の決勝戦。そのカードはなんと、グダンスクで行われたC組初戦と同じスペイン対イタリア戦! 優勝に喜ぶスペインチームやサポーターをテレビで見ながら、私はグダンスクの町で見かけたスペインサポーターの姿を思い浮かべていた。

閉幕後、ポーランドを訪れた外国人サポーターのインタビューを新聞やテレビで目にしたが、そのほとんどが、またポーランドに来たいというものだった。ポーランド人の優しさ、温かさに触れ、おいしいポーランド料理を堪能し、美しい景色の虜になってしまったのだという。ポーランドが大好きな私にとっても、これは嬉しい言葉だった。

ドイツサポーターでいっぱいのグダンスク旧市街

残念ながら、ポーランドは2分け1敗でグループ予選を突破できずに終わってしまったが、大会自体は大成功に終わった。この成功を受け、ポーランドはまた何かの選手権開催を目指すことにするようだ。いつか世界中の人が訪れる、大きな世界大会が行われることを願ってやまない。

スプリスガルト友美/プロフィール
ポーランド在住ライター。ポーランドでの欧州選手権盛り上がりの様子を見ながら、10年前日韓共催で行われたワールドカップのことを思い出しました。私の実家は会場となったカシマスタジアムのある茨城だったのです。「開催地のある茨城県」ということで盛り上がっていたあの日々のことと、今回ポーランドで間近に見た街の様子を、重ね合わせずにはいられませんでした。ブログ「poziomkaとポーランドの人々」