第4回 校外学習 長男の場合

前回は長女のルアンパバーンへのワイルドな校外学習を紹介したが、今回は長男(当時4歳)の、これまたびっくりな校外学習を紹介したい。

インターナショナルスクールの「Early year4」という、日本で言えば幼稚園年中クラ...
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前回は長女のルアンパバーンへのワイルドな校外学習を紹介したが、今回は長男(当時4歳)の、これまたびっくりな校外学習を紹介したい。

インターナショナルスクールの「Early year4」という、日本で言えば幼稚園年中クラスに在籍していた長男だが、このクラスで何度か校外学習を体験している。保護者も希望すればついて行けるので、私も2度参加してみた。

1度目は、「空港に飛行機を見に行こう」。空港へ行って、空港で働く人の話を聞き、実際に展示されている飛行機に乗せてもらい、操縦桿に触れたり、写真を撮影したりした。怖がりの息子は、ただただ飛行機を眺めるだけの体験だったので、大した問題もなく終わった。

次に参加したのが、「ラオスのお家に家畜を見に行こう」。これはひどかった。インターナショナルスクールの校外学習は、安全面・衛生面のきまりが日本の場合に比べて甘いことが多いので、私は出発からびくびくしていた。まず、小さなマイクロバスとバンに分乗。私は息子の担任の横に乗った。担任がドライバーに道を説明するのだが、なぜかなかなか目的地に着かない。しまいには、もう一人の先生の下調べが悪いと私に愚痴りだす始末。

それでもどうにか到着。そこで私の目に飛び込んできたのは、牛。大きな牛が、数頭ひもでつながれていた。周りに柵などはなく、触り放題なので、小さな子供たちは喜んで撫でまわす。尻尾をつかむ。大声で騒ぐ。そのうち、人のいいラオス人の使用人さんたちが、子供を抱えて牛の背中に乗せ始めた。いいのかなあ、そんなことして……と思った矢先に、牛が前足を高く上げて、背中の子供を振るい落とそうとしたのだ。幸い、そばにいた使用人さんが素早く子供を抱きかかえて牛から離し、大事には至らなかった。先生たちは「触っちゃだめよ」「大きな声を出すとびっくりするわよ」と、にわかに注意し始めた。

ラオスに住み始めてから気を付けていたことのひとつに、「動物との接触」がある。狂犬病の危険のあるラオスでは、野良犬には近寄らないし、野良猫さえも避けていた。この校外学習では、牛のほかに兎もいた。牛や兎に触ってはいけないと聞いたことはなかったが、とにかく牛のよだれに触れるほどの濃厚な接触はさせたくなかった。我が家が神経質すぎたのだろうか。インターナショナルスクールに通う、日本人以外の外国人には「動物可愛い~!」「動物最高!」というような家庭が多かったように思う。だから、この牛事件も、私以外は特に誰も気にしていなかった。

ありがたいことに、これ以外の校外学習は、「トゥクトゥク(※)に乗ってみよう」、「電車を見に行こう」といった、危険を伴わない活動だった。何事もワイルドなイメージのあるラオスであるが、インターナショナルスクールは校外学習の前に一応承諾書を提出させてはいる。いつ、どこへ、どんな手段で行くか。それを明記した紙に、親の「行っても良し」のサインを書かせる。だが、その中には、当然「荒くれ牛に乗るかも」など書いてあるわけもない。

日本の学校の校外学習は、万一のことを考えて学校側も慎重に計画し、無難なものになりがちだ。だが、ラオスで我が家の子供たちは思いがけず珍しい経験ができた。3年半の滞在中に、何度となく無謀な活動に参加した我が子たちだが、幸い大きな怪我や病気もなく過ごしてきた。あの頃の冒険は私にとっても子供たちにとっても、今、日本で何かに挑戦するときに「きっと大丈夫」と思える根拠になっている。

※オートバイの後部に客席がついた乗り物。三輪で屋根がついているものが多い。

村岡桂子/プロフィール
2007年から2010年までラオス滞在。2008年より、ウェブサイトや雑誌に寄稿。現在は山口県在住。小学校非常勤講師、翻訳家、フリーランスライター。