1.教師による体罰~日本と数か国について

体罰を受けた高校生が自殺し波紋が広がっているが、日本では教師による体罰は珍しくないようだ。先月のネット調査(*1)では、日本の学生4割以上が体罰を目撃または経験している。同時に3割が「教育上の体罰はやむをえない」と答えた...
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体罰を受けた高校生が自殺し波紋が広がっているが、日本では教師による体罰は珍しくないようだ。先月のネット調査(*1)では、日本の学生4割以上が体罰を目撃または経験している。同時に3割が「教育上の体罰はやむをえない」と答えたことにも驚く。学校教育法は体罰を禁じているのに、なぜ日本人は体罰を容認するのか。

上下関係を重視し、我慢を美徳とする日本文化が一因か。しかし体罰を法で禁じて慣習で容認することに国、教育関係者、親は矛盾を感じないのか。この二重基準や曖昧さは何とも日本的だと思う。体罰は暴力に違いなく、暴力の習慣を止めるのは簡単ではない。努力なしで止むことはまずないというのに。

儒教の影響で上下関係がさらに厳しい韓国は、法は体罰を禁止せず、具体的な程度、内容を定めている。韓国ドラマや映画にも体罰シーンが出てくる。日本と同様、自殺者が出る事件も起きて問題化し、事態の深刻さを受け、昨年ソウル市等の自治体が学生人権条例(*2)を制定し、学校での体罰を禁止するに至ったのは画期的である。

日本や韓国で教育と体罰がセットなのは、教師と生徒が上下関係にあるうえ、「体罰=熱心な先生」という価値観があるからだろう。しかしアメリカでは、体罰教師に高い評価は考えにくい。体罰は生徒を傷つけ反抗されるだけ。教師は口頭で指摘し生徒と話し合う。生徒は意見を言う権利があり、教師も生徒の主張を無視できないのが通常である。

ドイツで教育を受けた友人(*3)によれば、ドイツの学校は体罰禁止。まず口頭、次に書面で3回まで注意し、それでも改善しない生徒は退学となる。退学後は転校かドロップアウト…最良かどうかはわからない。しかし「子供のため」と体罰を肯定し、命を失うリスクを抱えた教育環境の方が、私にはもっと恐ろしい気がする。

<参考>
1: http://www.rbbtoday.com/article/2013/01/21/101489.html
2: http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130117/242361/?rt=nocnt
3: サンドラ・ヘフェリン。日本人の母とドイツ人の父を持つ。コラム「ハーフを考えよう」http://half-sandra.com/の他、著作多数。

えふなおこ/プロフィール
翻訳者、ライター。マスコミと渉外法律事務所に勤務後、現在はフリーランス。契約書、企業法務、メディア関連を多く扱う。日本、アメリカ、韓国等に居住経験あり。幼少時より成人後まで複数の言語教育(日本語、英語、韓国語、フランス語、スペイン語)を受ける。大学の専攻は比較言語学、法律、ジャーナリズム。育児と仕事と趣味のバランスを取るのが理想。引越の多い人生で、この原稿を書いている今も、引越直後で片付けの真最中である(笑)。