第2回 犬と暮らせる家探し

犬は不浄な動物とするイスラム教。そんなイスラム国家マレーシアでの犬事情は!?
まず、犬を飼っている人はいるのか。答えはイエス。 華人や外国人を中心に間違いなくたくさんの人が犬を飼っている。エリアによっては、禁じられている...
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犬は不浄な動物とするイスラム教。そんなイスラム国家マレーシアでの犬事情は!?

まず、犬を飼っている人はいるのか。答えはイエス。 華人や外国人を中心に間違いなくたくさんの人が犬を飼っている。エリアによっては、禁じられているはずのコンドミニアムでも多くの人が飼っている。ペットショップやトリミングサロンもあるし、獣医、ペットホテルなど、少なくともクアラルンプールでは日本にあるようなペットサービスは一通り揃っている。

ショッピングエリアにはペットショップも普通に立ち並ぶ。ドッグフードやシャンプーの品揃えはなかなかのもので、日本で買いだめする必要はなかったと後悔したほど

なぜ、犬に厳しいイスラム教の国で犬を飼うことができるのか。それはマレーシアがイスラム国家であると同時に、多民族国家であるからだろう。

マレーシアの人口構成は、最新の人口調査(2010年)によると、マレー系約67.4%、華人約24.6%、インド系約7.3%で、その割合は都市によっても異なる。クアラルンプールでは外国人も多く、非マレー系の割合が上記よりも高く、ペナンに至っては過半数を華人が占めている。国教はイスラム教と定められているが、信仰の自由も保障されている。モスクのすぐ近くにヒンズー寺院や中国寺院が堂々と並んでいるのはそのためだ。信仰だけでなく、各民族の生活慣習や文化も守られている。だから犬に関しても、ムスリム(イスラム教徒)は犬を飼ってはいけないが、ルールさえ守れば、他の民族にそれを強いることはないのだ。

さて、マレーシアで犬を飼うときに一番の問題となるのは、住む場所だ。現実には、外国人が気兼ねなく犬を飼えるエリアはとても限られている。

住宅のタイプは様々あるが、日本人の場合は、治安面からもコンドミニアムに住むことが一般的だ。コンドミニアムでの犬の飼育は条例で禁じられているが、そこはマレーシア。実際には物件のオーナー次第、コンドミニアムの運営次第で、本来禁じられている物件でも隠れて(いや、堂々と?)犬を飼う人も多いようだ。コンドミニアムの場合、外国人や華人の入居率が高いこともあって、「ルールさえ守れば」融通がきくらしい。しかし、近隣から苦情が出て訴えられてしまっては、引っ越しを迫られるだけでなく、最悪の場合処分しろといわれるリスクがないとはいえない。

そこで、我が家の場合は、犬OKのコンドミニアム物件を探した。そこで学んだのは、その部屋がOKかだけでなく、コンドミニアムの許可とその周辺の犬環境まで含め総合的に判断するべきだということだ。クアラルンプールで外国人が数多く居住し、日本人が最も多いとされるエリアでは、オーナーが犬OKと許可を出す物件が意外に多く、数多く紹介された。しかし詳しく聞いてみると、一歩ドアを出れば犬を隠さなければならない、コンドミニアム内を歩かせてはいけない、部屋で吠えないようにと条件がつく物件ばかりで、周辺で散歩している犬もほとんどいないという。5歳の愛犬に今更吠えるなといってもそれは無理に近いし、周辺を堂々と散歩できないのも運動量の多い犬にとっては大きなストレスになる。

幸いにも我が家は、外国人、特に西洋人が多い別のエリアのコンドミニアムを見つけることができ、気兼ねなく愛犬との時間を楽しんでいる。コンドミニアム内も散歩が許されているし、一歩外に出れば大邸宅が多いこのエリアではたくさんの番犬たちに出会うことができる。少々過剰な大型犬たちの歓迎に、我が家の臆病な小型犬は苦手意識を隠せないが、このマレーシアで特別に与えられたドッグフレンドリーな環境に感謝せずにはいられない。

わだ まきこ/プロフィール
早稲田大学大学院(教育学)修了後、渉外法律事務所、翻訳会社勤務を経て、出産を機にフリーランスで翻訳、執筆をスタート。愛犬の寝息を聞きながらの仕事は何より幸せ!? 2012年よりクアラルンプール在住。雑誌など、マレーシアネタに幅を広げて活動中。 マレーシア国立博物館日本語ボランティアガイド。ママ世代にとってはワーク・ライフ・バランスは永遠のテーマ。マレーシアでの生活からそのヒントを探っている。