第2回 パラリンピアンの声「2020年、東京でパラリンピックを!」

 
 
2020年オリンピック・パラリンピックの立候補都市、東京。3月4日から3日間、各メディアはIOC評価委員会による東京視察の様子を報道していた。以前は、関心が低いと報道されていた都民の支持率だが、3月26日に招致委...
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ロンドンでは市民の関心は高く、観戦チケットは過去最多の240万枚以上を売り上げ、多くの人がパラリンピックを観戦した。

2020年オリンピック・パラリンピックの立候補都市、東京。3月4日から3日間、各メディアはIOC評価委員会による東京視察の様子を報道していた。以前は、関心が低いと報道されていた都民の支持率だが、3月26日に招致委員会が報告した開催支持率調査によると、支持率が77%で過去最高になったという。

下肢障害選手を対象にベンチプレスで持ち上げる重量を競うパワーリフティング。日本人選手が180キロを持ち上げると、会場からは割れんばかりの拍手に沸いた。

テレビでは経済効果や雇用創出効果ばかりが取り上げられているが、多くのパラリンピアンはパラリンピックが東京で開催されることが、国民に障害者スポーツを知ってもらう大きなきっかけになると期待を寄せている。

私が初めて障がい者スポーツに出会ったのは、2010年冬季バンクーバー・パラリンピックの取材だった。正直、その時はオリンピックに関心があり、パラリンピックは「仕事だから」と初めて観戦したのだが、その思いはすぐにくつがえされた。ゲームが始まり競技を目の当たりにし、その迫力や技術性、競技の面白さに夢中になったのだ。現場では、私だけではなく、ほかの新聞社の記者らも同様の声をあげていた。「日本の国民にもっとパラリンピックの存在を知ってもらいたい」と。

パラリンピックは私たちが普段目にするスポーツとはルールが異なり、障害の度合いに応じて階級が分けられていたり、器具を使用したりする競技があるため、ゲームを直接見なければ迫力や魅力が伝わりにくい。2012年のロンドン・パラリンピック(バンクーバーに中丸をつけているので)で観客らに話を聞くと、観戦前は競技自体知らないと答えた人が多かったが、観戦後は「選手らが魅せる迫力あるプレーに釘付けになった」「今後も試合をみたい」と感想を話した観客が大半だった。

車椅子テニスで3大会連続金メダルを獲得した国枝慎吾選手の表彰式。鍛え上げられた上半身から生みだされるサーブは、時速120キロ以上。

パラリンピック競技は、日本では期間中であってもテレビで放映される機会が非常に少なく、総合テレビなどで流される映像は一日1時間足らず。スポーツとしての醍醐味、面白さを「伝える」という点では、映像に勝るものはないのに残念で仕方ない。韓国や北京などかつての五輪開催国の記者らに話を聞いてみると、パラリンピック開催後は、当然だがライブやテレビで観戦した国民が増え、障がい者スポーツに対する国民の認知、関心は確実に高まり、国の選手らに対する取り組みにも変化があったという。

多くの日本人選手たちは、「障がい者スポーツに興味を持ってもらうためには、世界のレベルに負けず、自分たちの競技レベルを上げて活躍しなければならない」と口をそろえる。多くの人に観戦してもらい、応援、報道されることが、選手たちのやる気を上げる。そして、選手たちが活躍することが、各競技団体が抱える若手選手の発掘、障がい者スポーツの認知にも繋がっていくのだ。

今年の9月7日、第125回IOC総会で2020年のオリンピック・パラリンピック開催都市が確定する。冬季、夏季に関わらず、日本各地で大会が開催されているので、一度足を運んでみてほしい。

先日、私が住む大阪のある市役所の前でも招致の旗が掲げられていた。私も選手たちと同様、2020年に東京でパラリンピックが開催され、多くの人に選手たちの活躍を実際に観戦してもらいたいと思う。

山下敦子/プロフィール
映画字幕編集職を経て現在はフリーランスライター。カナダ滞在歴約5年。大阪を拠点に活動し、時々海外逃亡。人物インタビューやコネタ、旅、終活など幅広いジャンルの記事をウェブや雑誌に執筆。映画、お笑いが好き。2012年に書き始めた落語台本では、上方落語協会佳作受賞。

2010年に取材したバンクーバーパラリンピックで、初めて選手の活躍を目の当たりにし「伝える」ことの大切さを痛感しました。日本では、なかなか放映されないパラリンピック競技ですが、こちらの連載では、皆さんに選手たちの声を届けていきたいと思います。