181号/林秀代

最近、緊急事態について考えることが度々あった。
 持ち回りで役員となった息子の学校のPTAで、通学途中に災害や事故に遭った時のための緊急カードをつくることになった。幼稚園児から高校生までいる学園の中では、アレルギーや持病...
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最近、緊急事態について考えることが度々あった。

持ち回りで役員となった息子の学校のPTAで、通学途中に災害や事故に遭った時のための緊急カードをつくることになった。幼稚園児から高校生までいる学園の中では、アレルギーや持病を抱えている子もいれば、通学時間の長い子など、それぞれの家庭で通学途中に“何か起きた時“の不安を抱いている。PTAの親たちはさまざまな経験を踏まえ、学校の意見も聞きながら記入項目を最低限に絞ったシンプルなカードデザインに決めた。その分空いたスペースには、緊急に医療行為を受ける時の注意事項など、親の心配事を自由に書き込める欄を設けた。小さなカードを最大限活かせるようにするにはどうすればいいか、自分ひとりの視野や考えには多分な死角があることがわかった。

そのミーティングがあった数日後に、淡路島を震源とする地震が早朝に起きた。周辺の交通機関は点検のため運行を停止した。数時間後に私鉄の運転が再開すると、息子は土曜日なのにスポーツの試合があるので学校へ行くと言い始めた。中学生の息子はJRと私鉄を乗り継いで1時間半かけて通学している。家を出る時はまだJRは点検中で、その区間は私が車で送った。ダイヤが乱れていた私鉄では、息子は普段は利用しない普通電車に乗り、途中の駅で別の電車に乗り換えてなんとか試合に間に合った。帰りに彼がJRの駅に向かった時は運転が再開した直後で、ひと駅だけの利用なのに次の電車が来るのは35分後という情報に少し考え込んだ。幸い少し歩けばバスに乗れることを思い出して、バスで帰宅した。息子の登校を許した私は少し緊張していたが、本人は案外機転を利かせて乗り切っていた。

先日起きたボストン・マラソンの爆弾テロ事件では、完走を祝福するゴール地点に恐怖の記憶を残すことになり、悲しさとともに腹立たしさを感じる。朝、見送った家族が元気に帰宅することは家族の一番の願いだろう。緊急カードの出番などないのが一番だが、バックパックの中に入れておきたい役目の大きさを改めて感じている。

(林 秀代・神戸)