183号/田中ティナ

12カ月のなかでハレの月があるとすれば、スウェーデンでは6月だ。四季の中でいちばん長い冬にも、もちろん魅力はあるけれど、かさばるダウンジャケットを脱ぎ、手足を伸ばして自由に振舞えるのは太陽の季節、夏だからこそのメリット。...
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12カ月のなかでハレの月があるとすれば、スウェーデンでは6月だ。四季の中でいちばん長い冬にも、もちろん魅力はあるけれど、かさばるダウンジャケットを脱ぎ、手足を伸ばして自由に振舞えるのは太陽の季節、夏だからこそのメリット。身軽になると気分までうきうきと軽やかに踊りだすのだから不思議なものだ。

もちろん夏は6月だけでなく8月までは続くのだけれど、6月に人々の夏への喜びがはじけるのは、長い冬のあとに、ようやく待ち焦がれた夏がやってくることへの期待感がピークに達しているからなのかもしれない。さらに、学校は長い夏休みに突入し、年間の2大行事のひとつ、ミッドソッマルフェスト(夏至祭)もあるのだから、うきうき気分は最高潮!

夏至祭は金曜日が前夜祭、土曜日が当日で、わが町の博物館の庭でもミッドサマーポールを野の花で飾り、広場の真ん中に立てるなど、各種行事が計画されている。お祭り参加者には子ども連れの家族も多く、子どもは年長者といっしょに花を摘んだり、花の飾り方を教わりながら、年中行事に必要な伝統を学んでいく。また、参加者の中には移民の家族も結構いて、親は遠巻きに眺めているパターンが多いけれど、子どもは積極的だ。子どもたちを見守る親や年長者の眼差しに、「子どもをいとおしむ気持ちに国境は無関係」と心がホンワカ温かくなる。

今回寄せられた原稿を読みながら、「バックグラウンドの違う人が集まって暮らしていると、感じ方も価値観もほんとうに多彩」と再認識した。みんな違ってあたりまえ、多様性に日々接しながら成長する子どもたちは、どんな大人になるのだろう、と夏至祭ムードにご機嫌になりながら彼らの将来が楽しみになってきた。

(スウェーデン、エステルスンド在住/田中ティナ)