第8回 復興に向かって出陣 “相馬野馬追” (後編)

相馬野馬追の舞台となる南相馬市と相馬市は、太平洋沿岸部に位置しており、いわき市同様「浜通り」とよばれている。
わたしの故郷いわき市から、北に位置する南相馬市までの距離は約80㎞、相馬市までは約110㎞。福島第一原子力発電...
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相馬野馬追の舞台となる南相馬市と相馬市は、太平洋沿岸部に位置しており、いわき市同様「浜通り」とよばれている。

わたしの故郷いわき市から、北に位置する南相馬市までの距離は約80㎞、相馬市までは約110㎞。福島第一原子力発電所は、いわき市と南相馬市の間に位置しているのだが、国道6号の一部の区間が原発事故に伴う帰還困難区域に指定されているため、許可車両以外の通行が規制されてる。

小高神社近くにある小高区役所

ただし、復興・除染に携わる事業者や、南相馬市や帰還困難区域の住民には通行許可証が渡され、自己責任の下、通ることができる。しかし、わたしはその通行許可証を持っていないので、距離は長くなるが宮城県まで高速道路を使いまた福島県に戻るというルートを使った。そのため、おなじ浜通りの相馬市へ距離は250㎞以上、所要時間4時間という通常の倍以上の時間をかけて、ようやくたどり着いたのだ。

女武者

例年、500騎の勇壮な騎馬が参加していたのだが、県外へと避難している騎馬武者や騎馬がいるため、震災のあった2011年に参加できたのは80騎。規模はだいぶ縮小されたが、伝統を絶やすことなく開催された。2012年は、386騎。そして震災後3度目の開催となる2013年は、429騎が参加し、例年の約9割まで回復したのだ。

野馬追は「三社五郷」の祭事である。相馬中村神社は、相馬市の「宇多郷」と南相馬市鹿島区の「北郷」が、相馬太田神社は、南相馬市原町区と飯館村の「中ノ郷」で構成されている。そして相馬小高神社は、南相馬市小高区の「小高郷」と、大熊町、浪江町、葛尾村、双葉町で構成される「標葉郷(しねはごう)」は、福島第一原子力発電所周辺の地域。

「小高郷」は、福島第一原子力発電所からは約20~30㎞の、旧警戒区域だったところだ。

相馬小高神社

現在、一時帰宅は認められているのだが、宿泊することは禁止されている。例年、この小高郷からは約70騎が出陣していたが、仮設住宅や借り上げ住宅などでの避難生活を強いられており、今回は61騎が避難先などから駆けつけた。

また「標葉郷」の地区は、福島第一原子力発電所の所在地なので、旧警戒区域や現警戒区域に指定されており、44騎が避難先から出陣した。

「参れ!参れ!」

「一言(いちごん)申し上げます!」

「承知!」

総大将との記念写真。同じ列に並ぶことは禁じられており、一歩下がることが基本 /いわき市出身の森まさこ大臣の姿も

戦国武士言葉が勇ましく響き渡る野馬追。2014年は、さらに多くの騎馬が出陣できることを祈り、いわき‐相馬間の常磐自動車道の開通により、さらに多くの人たちが訪れることができればいいなと切に願う。(2013年7月現在)

大堀功美子/プロフィール
オーガニックコンシェルジュ/ライター/フォトグラファー/メディアコーディネーター
福島県いわき市小名浜出身、オーストラリア・ゴールドコースト在住。オーガニックコンシェルジュとして五感で愉しめるオーガニックを広めるため、メディアへの出演、新聞や雑誌、ウェブマガジンなどへの寄稿、ワークショップを開催。連載コラムもいくつかある。オーストラリアにあるFuture Therapy Massage&Day Spa専属フォトグラファー。