199号/林秀代

日本で無縁墓が増えているという。メンテナンスが滞り墓石が壊れてしまったお墓の所有者と墓地や寺との間で連絡がつかなくなったり、また一族の間で継がれなくなった墓を“墓じまい”するときに、墓石が適切に処分されず“墓の墓場”と呼...
LINEで送る

日本で無縁墓が増えているという。メンテナンスが滞り墓石が壊れてしまったお墓の所有者と墓地や寺との間で連絡がつかなくなったり、また一族の間で継がれなくなった墓を“墓じまい”するときに、墓石が適切に処分されず“墓の墓場”と呼ばれる場所へ不法投棄されるといったことが、各地で問題になっているのだと報道で知った。

我が家でも、明治初期までにつくられたいくつかの墓石を1か所にまとめ、さらに記念の石碑を建てる計画があがっている。夫の先祖は明治時代に“内地”から北海道へ移住したため、親族が移住前の歴史を調査して、古く苔むした先祖の墓石を見つけ出したのだった。その墓石はこの夏の大雨の被災地付近にあるので、もし雨で流されていれば、本当に無縁墓となるところだった。

火葬が定着していることもあるのか日本のお墓は家単位が主流で、お墓参りの習慣も一般的にはまだ残っている。だからご先祖さまのもとへお参りに行けないものは、後ろめたい気分を味わう。最近はなかなか戻れない故郷のお墓の掃除や墓参りまでを代行してくれるサービスもあるという。人生も折り返し点を過ぎると、お参りする側とされる側の両方の立場で考えるようになってきた。子供は将来どこに住むかもわからないし、形のあるものを残して死んでも価値観は変わってくるだろう。でもどこかで自分が生きた証は残したい。お墓のことを考え始めると寝つきが悪くなるので、寝る前は考えない。

アメリカのお墓は個人単位で建てられ、お墓参りの習慣もあまりないと聞いたことがあるが、お墓の維持はどうやっているのだろう。日本以外の国でも家族単位で建てられたお墓を維持している国や地域があるのか、知りたくてたまらない。

林 秀代 (神戸在住)